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普 遍的価値観 〜朝日新聞オピニオン 高橋源一郎氏  「ぼくには常識がな

い?」 〜


 2012 年4月26日、朝日新聞のオピニオン論に作家の高橋源一郎氏の書かれた記事が掲載されました。
 簡単に内容とまとめると、日本と海外の入学式や試験制度等を比較し、「日本で一般に知られている常識と世界とは違う」と提起されています。
 日本と世界が食い違う際、

「世界の常識を知らない“ぼく”は、非常識な人間なのか?」

と自虐的にユーモアを交えて語ってらっしゃいました。
(※個人的に面白い文章なので是非お読みになられる事をお勧め致します)

 高橋氏が提起するに当たって、殆どの部分を既存の文書からの引用という形になっています。単純化すると某かのソースや実体験を基にして書かれています。
 ところが最後の最後、とある部分については違いました。


それから、北朝鮮の 「ミサイル」発射の件もなんか変な気がするんだよ。海外のメディアは、「ロケット」と呼んでいるみたいだけど、日本にいると、目に飛び込んでくるのは「ミ サイル」ということばだ。
弾頭を装着すれば「ミサイル」で、宇宙開発が目的ならば「ロケット」というらしいんだけど、そんな違い、なんか意味があるのかな。
っていうか、その「ミ サイル」より、アメリカ軍が持ち込んでいるかもしれない核兵器や福島第一原発4号機の燃料プールの方がずっと怖いと思っちゃうのは、ぼくに「常識」がない からなんだろうか
(以上引用終了。尚、読みやすさのために改行・赤字処理をしています)


 正直、存じ上げませんでした。
 つまり「日本のマスコミは北朝鮮のロケットをミ サイルだと(定義が違うのにも関わらず)強弁している。現に海外メディアはロケットという表記をしている。アメリカ軍や福島原発の燃料プールの方が怖い」 という趣旨でしょうか?

 成程、高橋源一郎氏のご指摘が事実であるならば、確かに世論誘導というか意図的に危機を煽っている危険性があります。
 では順番に検証を加えてみましょうか。


 まずはロケッ トとミサイルの定義からですね。広辞苑からそれぞれを調べてみましょう。

ロケット【rocket】
機体内に貯えた推進剤を燃焼させて高速度で噴出させ、その反作用として推力を得る装置。「―砲」「―‐エンジン」

ミサイル【missile】
(飛び道具の意)ロケットなどの推進装置を備えた軍用の飛翔体で、弾頭を装着し、各種の誘導装置を持つもの。発射地点と目標とによって、地対空・空対空ミ サイルなどに区別する。誘導弾。
→―‐りょうほう【―療法】レウハフ
(共に広辞苑 第五版より引用。 (C)1998,2004  株式会社岩波書店)


 ふむ、用法としてはロケットが“推進装置”であり、ミサイルが“ロ ケットを含む推進装置を持つ兵器”ですかね。
 置き換えればロケット=ガソリンエンジン(機構)、ミサイル=車でしょうか。

 今一高橋氏の言と合致しませんね。海外メディアが「ロケット」と呼んでいるのであれば、其れは『推進装置』とだけ言っており、飛翔体全体の事ではありま せん。意味が通らない、と申しましょうか。
(車が電柱にぶつかった、という事実を、ガソリンエンジンが事故を起こした、と言うようなものです)

 もしかしたらロケット自体に別の意味もあるのかもしれません。生憎ネイティブではない私は、現地でロケットという単語がどのような意味で使われているの か知りません。
 ではロケットの歴史を調べてみましょう。


【ロケットの歴史】
前近代
ロケットの歴史は古 く、西暦1000年頃には中国で、今のロケット花火の形態が発明され武器として利用れていた。 1232年、モンゴルとの戦いで使用さ れたという記録がある。その後、モンゴル人の手に渡り各地で実戦に投入された。14世紀半ばには中国の焦玉により多段式ロケットが作られた。
1792年にはインドのマイソール王国の王子であるティープー・スルタンによって対英国、東インド会社とのマイソール戦争で鉄製のロケットが成功裏に使用 された。英国は興味を持ち、19世紀までに開発した。開発の中心人物はウィリアム・コングリーヴであった。1814年の米国におけるボル ティモアの戦いで は英国艦エレバスからフォートマクヘンリーにむけてロケットが発射され、観戦していた弁護士フランシス・スコット・キーによってアメリカの国歌星条旗に歌 われるに至った。同様に1815年のワーテルローの戦いでも使用された。
(〜中略〜)
近代のロケット、すなわち宇宙に行けるロケットが研究・開発されたのは、19世紀後半から20世紀である。
コンスタンチン・ツィオルコフスキーはロケットで宇宙に行けることを計算で確認し、液体ロケットを考案した。このため彼は「宇宙旅行の父」と呼ばれてい る。ロバート・ハッチンス・ゴダードは、1926年に世界初の液体ロケットを打ち上げた。このため「近代ロケットの父」と呼ばれている。世界初の液体ロ ケットエンジンはツィオルコフスキーのOR-2からセルゲイ・コロリョフ(1907年-1966年)が中心となったソ連のGIRD-09の開発とされてい る。実用的な液体ロケットは、ウェルナー・フォン・ブラウン(1912年-1977年)が中心となってナチス・ドイツで開発した、V2ロケットがはじめと されている。
(以上wikiより引用)


 意外に古くからロケットの概念が知られていたようです。ざっと1000年以上の兵器としての歴史を持ち、宇宙進出という概念が付加されたのは精々此所 100年程ですね。
 つまり海外 (欧米だけでなく中国やインド、影響を受けてきた近隣国も含め)ではロケットとはそもそも攻撃のための兵器だという常識が浸透し ていました。
 日本ではロケットという概念が近代になって入ってきたため、日本国の常識ではロケット≠兵器の印象が強い。よって殆どのニュースではわざわ ざミサイルという兵器の概念を持つと付加しなければならなかった、というのが真相ではないでしょうか?

 また既存の兵器にはロケットランチャー、ミサイルランチャーと言うものがあります。どちらも“弾頭を積み自立飛行をする爆発物”なのですが、極々普通に Rocket Launcherと呼ばれています。
 例えば日本に於いてもイラクの自衛隊駐屯地へロケット弾が打ち込まれた、等の記事を目にした事があります。
 ちなみに両者の違いは“誘導装置があるか否か”です。もしも海外メディアユがRocketという表記であるならば、“誘導性能に乏しい兵 器”という認識だと推測しています。


 ……おや?お かしいですね。高橋源一郎氏曰く、日本の常識は世界の常識と違っていておかしい――のではあれば、最低限世界の常識をご存じでなければ言えないの ですが。

 いやでもちょっと待って下さい。結論を出すのはまだ早いです。

 日本で公 称800万部を誇る朝日新聞が、まさか北朝鮮でもあるまいし事実と反する記事を堂々と掲載する筈が無いですし。
 高橋源一郎氏のような名実共に日本最高峰の作家の方が、北朝鮮のスポークスマンのように、新聞紙面で大嘘を吐く訳が無いではありませんか。
 まさか特定の結論へ誘導するために、海外の“都合の良い事象”を引っ張ってくる、なんて恥ずべき真似をする訳がありません。


 では引き続き検証を続けたいと思います。
 次は「海外の メディアはロケットと呼んでいる」ですね。上で説明したように世界の常識はロケット が兵器であるため、わざわざミサイルと言い直さないという仮説を立てました。
 従って「海外メディアがロケットと表記していても、其れは最初から兵器としての意味が含まれている」と。
 しかしあくまでも其れは“私”の結論です。取り敢えず北朝鮮がロケット発射を発表した2012年3月16日から、海外のメディアを取り上げてみましょ う。
(※英訳が拙いのは単純に私の能力が低いせいです。原文も並記致しますので、そちらも合わせてご覧下さい)


US says 'hard to imagine' it can give food aid if NKorea goes ahead with rocket launch Friday, March 16, 2012 12:37 AM
(アメリカ国務省 もし北朝鮮がロケット発進を進めるならば、食物援助は「考えられない」だろう。2012年3月16日)
http://www.globalregina.com/world/us+says+hard+to+imagine+it+can+give+food+aid+if+nkorea+goes+ahead+with+rocket+launch/6442602316/story.html

WASHINGTON - The United States says it is "very hard to imagine" that it can go ahead with its offer of food aid if North Korea proceeds with its planned rocket launch.
State Department spokesman Victoria Nuland said such a launch would call into question North Korea's good faith and would not create an appropriate environment to go ahead with the food shipments.
(ワシントン――-もし北朝鮮が、その設計されたロケット発進を続行するならば、合衆国はそれが食物援助を進めるかもしれないことが、「考えられない」と 言います。
国務省スポークスマンビクトリア・ニューランドは言います――北朝鮮のそのような誠実さは食物支援を進めるための、適切な環境を作成しません)

North Korea in a surprise announcement Friday said it plans to launch a satellite into space on the back of a long-range rocket in April. In late February, North Korea agreed to nuclear concessions and a moratorium on missile tests in return for the food aid.
(北朝鮮の突然の声明は金曜日に「4月に長距離ロ ケットを使い衛星を宇宙へ送ると計画している」と伝えていました。
前の2月に、北朝鮮は食物援助を受ける代わりにミサイル のテストにおいて核の譲歩とモラトリアムを承諾しました)
(以上引用終了)

 ……えっと、どうでしょうか?記事では以下の二つを指摘されています。

1.    2月の米朝合意で北朝鮮は核開発と長距離ミサイルの開発を、食料援助と引き替えに停止すると約束した
2.    しかし今回のロケット打ち上げは合意違反であり、食糧支援は出来なくなる

 どう見ても 「ロケット=兵器=ミサイル」と同じ意味で使っているように思えますが……まぁまだ一カ所です。
 たまたま、偶然、世界で唯一「ロケット=兵器」と書かれてあったのかも知れませんし、また私が悪意によってわざわざ例外の方を引っ張ってきた可能性もあ ります。
 もっと他の紙面も見る必要があります。


NORTH KOREA BREAKS FOOD-AID DEAL, PLANS TO LAUNCH SPACE ROCKET
NORTH KOREA IS A ROGUE NATION, BEHAVES LIKE ONE
BY: Washington Free Beacon Staff - March 16, 2012 12:54 pm
(北朝鮮は食料援助を破壊した。北朝鮮の長距離ロケットを計画するならず者国家だ。ワシントン自由指針スタッフ-2012年3月16日12時54分)
http://freebeacon.com/north-korea-breaks-food-aid-deal-plans-to-launch-space-rocket/
The announcement comes weeks after the U.S. and North Korea reached an agreement under which the rogue nation would agree to freeze its weapons program in return for food aid.
(米国と北朝鮮は食料援助の代わりに武装を凍結すると合意した――しかしならず者国家は協定の数週間後に今回の告知を通知した)
(以上引用終了)


 此方はRogue Nation(ならず者国家)」とまで言っています。
おや、“世界の 常識が正しい常識”であるのならば、日本のメディアもまた北朝鮮を「ならず者国家」と呼ぶべき――とは、高橋氏は仰らないのでしょうか?
 都合の良い部 分(海外のメディアはロケットと呼んでいる“らしい”)は見習い、都合の悪い部分(ならず者国家)は取り上げない――なんて話は無いで しょうから。
 きっと海外メディアでそう呼ばれているのをご存じないだけ――はて?そうすると高橋氏は何を根拠にして「海外メディアではロケットと呼ばれている」と断 じたのでしょうか?

 では此所で日本メディアも取り上げてみましょう。「日本のメディアは海外と違ってミサイルという呼び方をしている」と仰った事を念頭にお読み下さい。


Japanese government considers intercepting North Korean rocket if it flies near Japan
The Yomiuri Shimbun Published: March 18, 2012
(もし日本の側を飛び越えるならば、日本政府は北朝鮮の ロケットを妨害する事を考慮します。読売新聞英語版2012年3月18日。)
http://www.stripes.com/news/pacific/japanese-government-considers-intercepting-north-korean-rocket-if-it-flies-near-japan-1.171972
When North Korea launched a ballistic missile in April 2009, it informed the International Maritime Organization in advance that it would set danger zones in the Sea of Japan and the Pacific Ocean.
At that time, the Japanese and U.S. governments prepared themselves for the launch with the U.S. forces' early warning satellites and the Defense Ministry's warning and control radars. They also deployed Aegis-equipped destroyers in the Sea of Japan and the Air Self-Defense Force's early-warning aircraft.
This time, the Japanese and U.S. governments are expected to prepare in a similar manner, according to officials.
(北朝鮮が弾道ミサイルを2009年4月に乗り出した際には、事前に危険地域を日本海と太平洋に設定し、国際海事機関に知らせました。
その時、日本人と米国政府は米国力の早期警戒衛星および防御省の警告とコントロールレーダーと進水への心構えをしました。
彼らは、日本海および航空自衛隊の早期警報用の航空機の保護装備されている破壊者も使いこなしました。
役員によると、この間日本人および米国政府が同様な方法で準備するよう期待されています)
(以上引用終了)

 記事の見出しは“Rocket”、記事の中では“Missile”です。おかしいですね。日本の報道機関でもロケットと言っていま す。発音が違うとかでしょうか?


 続いて北朝鮮のRocketが空中で爆発・飛散した後の記事です。


The senior administration official said that the failure of the latest launch shows that the North Korean missile program hasn't advanced since its last launch attempt in 2009, welcome news to U.S. officials.
(最新の発進の故障は、2009年にあった北朝鮮のミサイル開発よりも進んでいない事を示している)
http://online.wsj.com/article/SB10001424052702304444604577340343672810680.html?mod=WSJAsia_hpp_LEFTTopStories
"They're not moving forward. If anything they're stuck in place or moved backwards," he said. "It does demonstrate that they are not advancing their ballistic missile technology."
He said that this may be due to sanctions that are designed to restrict North Korea's ability to acquire or trade technologies that support the nuclear program. But he said it was impossible to say for certain if there is a link.
(「ミサイル技 術は進歩していません」と彼は言いました。どちらかといえば、それらは現状維持か、または後退しています。
「つまり弾道弾テクノロジーを早めていないのを証明します」
彼は言いました。これは核開発をサポートする技術を取得出来なかったのは、北朝鮮への経済制裁が影響したのかもしれません。
しかし、彼は因果関係があるかどうかは確実ではないとも言いました)
In any case, he said, the failure will make it harder for the North Koreans to sell their nuclear technology elsewhere, more welcome news for the U.S. and its allies.
(兎も角、失敗は北朝鮮が核とミサイルの技術を販売が困難となった――アメリカおよび同盟国にとっては喜ばしいニュースです)
(以上引用終了)


 また“missile”と いう単語が出てきましたが――政権交代以前にした経済制裁が、結果的に 北朝鮮の核や長距離ミサイルの開発を困難にした、と分析しています。
 何が興味深い かと言えば、日本国内のテレビ・新聞で同じような論評(北朝鮮の非武装化に対し経済制裁が有効である)は全く聞かれませんでし た。
 高橋源一 郎氏は『経済制裁を科す事で核や長距離ミサイルの開発が困難となった』という、海外メディアの“常識”には何故か触れませんね。


North Korea's botched "satellite" launch Admission of failure Apr 13th 2012, 5:23 by D.T. | SEOUL and H.T. | TOKYO
(北朝鮮のやり損なった「衛星」進水式 2012年4月13日)
http://www.economist.com/blogs/banyan/2012/04/north-koreas-botched-satellite-launch
On balance, the missile debacle looks laughable, but isn’t. It appears likely to increase the regime’s international isolation, which tends to make it more threatening. It is also likely to increase the young Mr Kim’s credibility gap at home, which may make him more repressive.
(全体的に北朝鮮の国際的な隔離は深まる。また北朝鮮自身を刺激する事によって、若い金氏は圧政的になるだろう)


A Pyongyang Joke:The missile may have fizzled, but so did American policy.
REVIEW & OUTLOOK Updated April 13, 2012, 7:48 p.m. ET
(平壌ジョーク:ミサイルは失敗に終わったかもしれないが、アメリカの北朝鮮政策も失敗した 2012年4月13日)
http://online.wsj.com/article/SB10001424052702304444604577341642956156450.html?mod=WSJ_Opinion_AboveLEFTTop
After Friday's launch failure it will be tempting to think that the North Korean threat is best treated as a joke.
But their proven nuclear capability is no joke, and it will be even less of one whenever the regime finally masters the ballistic technology that allows them to put parts of the U.S. at risk. And that's to say nothing of the threat the regime poses every day to its own people.
(金曜日の進水故障の後、北朝鮮の脅威がジョークだと思われるかもしれない。
しかし、証明された核の機能は全くジョークではなく、最終的に北の政権が米国を危険にさらすことを可能にするミサイル技術を取得するまで猶予はない。
そして毎日政権がそれ自身の人々に与える脅威は言うまでもない)

U.S. policy would do better to leave the U.N. behind, work with like-minded countries such as Japan, and use sovereign U.S. means particularly financial sanctions to hasten this regime's end. Otherwise the real joke is still on us.
(アメリの方針は、国連をだけでなく北朝鮮の政権の終わりを早めるために、日本など共に経済制裁働きかけねばならない。
さもなければアメリカの政策はジョークのままであろう)
(以上引用終了)


 何と申しましょうか、こう既に missileという単語は普通に使われていますね。上に紹介した記事はマイナーな所からの引用ではなく、AP通信、エコノミ スト、ウォールストリートジャーナルといった大手です。
 幾つか調べた結果、打ち上げ一ヶ月程前から直後まで、Rocket・Missileという単語が数多く使われていました。
 またRocketという単語へ対し兵器としての意味合いを含む文章が殆ど――というか、含まない文章は皆無であるように思えます。

 新聞記事の内 容をまとめると、どこをどう見てもミサイルという単語を連呼した上、核の脅威は終わっていないと書かれていました
(中には経済制裁が今回のロケット失敗へ繋がった、と評価する所もあったぐらいです)


 高橋源一 郎氏は一体、いつ、どこで、どうやって、「海外メディアではミサイルという単語は使われていない」とお思いになったのでしょうか?
  また掲載した朝日新聞社は氏のお言葉の真偽を確かめもせず、何故、そのまま掲載したのでしょうか?
  常識が無いのは“誰”でしょうね?またご存じではないのは常識ではなく、只“恥”だと私は思いますが。

 そもそも私――こと弾犀――は極々普通の平凡な人間です。人混みで石を投げれば当たるような、どこでもいるような人間です。
(時折「いい性格をしている」と誉められる事はありますが)
 しかしそんな十人並みの私が調べた結果、其の筋の(片や公称800万部の大新聞、片やキャリア数十年の大作家)プロの言葉とは真逆の結果が返ってきまし た。嘘だとお思いになるのでしたらリンク先をご覧下さい。

 私のようなド素人がインターネット検索をしながら数時間でまとめた情報を、まさか新聞社や作家の方が知らない、と考えるのも無理があります。
(尤も私は某所のニュースまとめサイトから知識を得たに過ぎませんが――いつも感謝しております外電様&床屋の皆さん)


 高橋源一郎氏は“海外の常識”と“日本の常識”が違う事に違和感を覚えてらっしゃるようです。
 特に引用した部分、
「北朝鮮のミサイルより在日米軍の核兵器持ち込み疑惑、また福島原発の燃料プールの問題の方が気になる」
というのは一体“誰”のご意見でしょうか?

 全体の文脈から察するに、「海外では○○、だけど日本は××」という論旨をされているので、恐らく世界もまた在日米軍等について心配している、という事 なのでしょうか。
 個人的な意見ですが、アメリカの戦略核が日本へ向けられる事は(まず)あり得ないでしょう。福島原発も取り敢えずは落ち着いています。
 対して現在進行形で日本へ長距離ミサイル(自称核弾頭を積んでいるそうなので、高橋氏の常識でもミサイルと言って差し支えのない代物)を向けている国が あります。
 さて一体どれが一番危険でしょうか、と問われれば北朝鮮だと答える日本人が殆どでは無いでしょうか?危険のレベル自体が違いすぎます。

 そもそも 日本のメディアがさもミサイルミサイルと反北朝鮮への世論を作ろうとしているのであれば、どうして高橋氏は寄稿出来たのでしょうか?
 朝日新聞もまた立派なメディアなのですから、そういった意図を持っていれば取り上げる筈は無いかと。
 まぁ逆の話――例えば「北朝鮮へ対する風当たりを和らげるために、まるで日本の世論が間違っているような誘導をした」なんて事はないでしょうし。


 此の世界に普 遍的価値観――要は“世界の常識”なんてものは存在しません

 「犯罪は悪い事だ。悪い事はしてはいけない」程度の共通認識はあるでしょうが、いざ断罪する場合には死刑制度の是非、累進刑(と言うのかどうか分かりま せんが、複数罪を犯した場合、それぞれの量刑を足すのかどうか)の有無でも分かれます。
 歴史・風習(慣習法も含む)・地政学(地理的要因)等々、宗教と付随する道徳(国教であるかどうか)でも変わりますね。
 確かカトリックは世界で約20億人の信徒がいるとされています。世界人口の多くを占める、つまり“世界の常識”ですね。
 では日本も見習ってカトリックにすべき――とはならないでしょう?
(そして憲法九条のような「紛争の武力介入による解決を禁止する」事が決められている国は、世界に於いてごく少数派でしょう。にも関わらず、 其方は世界の常識を見習おう、という話が出ません)

 日本国内の話ですが、例えば温泉地って如何思われますか?
 「創業○○年、××時代から続く出湯の里」というキャッチフレーズがお馴染みですね。近年は掘削技術の向上により、あちこちで温泉が掘られては村興しと して使われています。
(そして悲しいかな全てが全て成功とは限りませんが)
 古来より温泉は重宝されてきた――という常識は“嘘”です。

 全国各地に“牛の首”という地名があります。温泉が沸いた所によくつけられた名前です。
 というのも同名の民話に「温泉が沸いた場所へ牛の首を埋めると、温泉が枯渇出来る」と言った故事が伝えられてきたからです。一体何故わざわざ温泉を止め ねばならないのでしょう?
 まずは温泉が鉱泉であり、川へと流れ込む場合です。質にも寄りますが川魚は寄りつきませんし、濃度によっては水を飲んだ人間が中毒で命を落とす場合もあ ります。
 当然そういった“危険”な川の水を田畑へ引かないでしょうから、周囲の生産性は落ちます。
 次に温泉自体の問題。言い伝えでは「温泉が出ると其れにかまけて働かない」そうです。付き合い方次第、中には細々と運営している所もありますが、少数で しょう。

 中には現代のように「温泉リゾート地を立ち上げて観光客を!」的な衝動に駆られる方もいらっしゃるかもしれません。
 しかし現代と違って交通網も貧弱(時代によって領民の移動が禁じられますし)、また経済的にも貧しい(というか自由に遣える時間が殆ど無 い)状態で、観光客目当てにどうこうするのは困難です。
 従って名湯と名高い湯治場、または街道筋にある旅館街ぐらいしか、温泉を使って生計を立てられませんでした。

 現代と其れ以前というだけで“常識”が反転した具体例ですね。

日本の例一つとっても普遍的価値観なんてあり得ません。時代や場所によってベスト・ベターなやり方は変わりますし、他で通用したらと言って別の場所でも通 用するとは限りません。

 だからと言って新しい方法が全て間違っているとは言いません。受け入れるに当たってどう変わるのか、メリットに比べてデメリットはどれだけあるのか、と いう議論も何もせず、只「海外の常識“だから”正しい」という姿勢を受け入れてはいけないかと思います。


 では最後に海外の記事でお口直しをどうぞ。

Worry more about North Korea than about Iran Ian Bremmer April 12, 2012
(世界はイランよりも北朝鮮を注視すべきである 2012年4月12日)
http://blogs.ft.com/the-a-list/2012/04/12/worry-more-about-north-korea-than-iran/#axzz1rm3s1Tdb
That’s why, for the next few weeks, we should worry more about North Korea than about Iran. Compared with North Korea’s government, Iran’s theocracy is an open book. Bluster among players in the controversy over Iran’s nuclear programme has market watchers on edge, but the near-term risk of trouble here is over-rated. Americans and Europeans have little appetite for another Middle East conflict that’s sure to pressure oil prices and imperil their delicate economic recoveries.
(部外者は北朝鮮の信頼出来る解決方法を持っていません。それは、次の数週の間私達が北朝鮮についてイランより多く悩む理由です。
北朝鮮政府に比べて、イランの神権政治は開いている本です。
イランの核のプログラムの上の議論のプレーヤーの間の荒れ狂う風は、いらいらした市場関係者を持っているけれども、ここでの故障の目先のリスクは過大評価 されます。
アメリカ人とヨーロッパ人は、原油価格抑制のために確信している別の中東粉争への小さな関心を持ち、それらの繊細な経済復興を危険に晒しています)
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