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事 実の切り貼り 〜ここ数年で最も賢明なリーダーである(読売新聞意訳)〜

 何 と申しましょうか、こう、私も一応社会人ですので毎日記事を読んでいる訳でも、またネットニュースを検索している訳では御座いません。
 よって「アレ?此の記事矛盾していないか?」と思っても、裏を取るのは休日に(しかも私用が立て込んでいない時)に限られます。
 新しい記事を上げる際も、ともすればほぼ例外なく鮮度が落ちてしまいますが……まぁご容赦下されば幸いです。


 気を取り直して2012年4月20日、読売新聞には以下のような記事が経済されました。


ここ数年で最も賢明なリーダー…米紙が野田首 相を評価
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20120420-OYT1T01016.htm
 米紙ワシントン・ポスト(電子版)は19 日、野田首相へのインタビューをもとに「日本は難しい決断ができるか」と題する記事を掲載した。

 記事で は、首相が取り組んでいる四つの「困難な問題」として、消費税率引き上げ、原発再稼働、沖縄の米軍基地再編問題、環太平洋経済連携協定(TPP)参加を挙 げた。首相はこれらに同時に答えを出そうとしているとし、「ここ数年で最も賢明なリーダー」と評価している。

 首相の政治手法については「伝統的な日本のリーダーがとってきた地味なものだ」としつつも、困難な政策課題を克服できれば「他国の見本となるリーダーに なる」と持ち上げている。その一方で、「派手な だけで問題解決能力がなかった首相」ばかりが続き、「米政府内には野田首相をどこまで支えるかという方針が定まっていない」という見方も紹介し ている。
(以上引用終了)


 成程。まとめてみれば「幾つ か課題があり、其れらを解決しようとしている野田総理は、ここ数年で最も優れた指導者である」と。
 読売新聞が正しいとすれば、絶賛まではいかないでしょうが、賞賛しているのは確かなように伺えますね。しかも”ここ数年”というのは福田・麻生元総理あ たりを含めているのでしょうか?

 取り敢えず原文、読売新聞が引用したワシントンポストを読んでみましょう。


Can Japan make the tough decisions?(「日本は難しい決定をすることができますか?」……ワシントンポスト2012年4月19日)
http://www.washingtonpost.com/opinions/can-prime-minister-noda-set-japan-back-on-course/2012/04/19/gIQAGsJxST_story.html
(かなり長いので割愛します)


 確かに読売新聞の言ったような事が書かれてありました――が、後半部分にこんな一文が書かれてありました。


But after two relatively flamboyant but utterly clueless premiers, Noda’s solidity is welcome.
(しかし二人の派手で全くcluelessな 総理の後では、野田の堅実性は好ましい)

【Clueless】
1.    《略式》〈人が〉無知な,どうしようもない.
2.    手がかりない,跡を残していない(trackless)
(小学館プログレッシブ英和中辞典 第3版より引用)


 ……要は、

『派 手だけど無能な(好意的に訳しても成果の無い)二人の総理の後では、ここ数年で最も賢明なリーダー』

と受け取るのが普通の感覚ではないでしょうか?
 前々総理が“Loopy(間抜け)”、前総理が“Stupid(愚鈍)”と揶揄されたのに比べれば、格段の進歩と言えなくもないですが。

 さて、私のブログをご覧頂けている方の殆どは、原文(ワシントンポスト紙)を付け加えたため、記事が本来持つ意味を理解出来たかと存じます。
色々な課題があるけれども、 前二人の無能な総理に比べれば野田総理は堅実性――要は、取り組もうとしているから、ここ数年で最も賢明なリーダーだ、程度の話です

 ですが――恐らく、読売新聞を見た、または購読されている方の殆どはこう思ったでしょう。「野田総理は海外で高く評価されているんだ」と。
(見出し自体が「ここ数年で最も優れた」とあるため、有能であると印象だけが強く残るでしょう)
 疑問に思いませんか?どうし て海外の絶賛した部分だけを取り上げ、前提となっている“無能な二人の総理(要は民主党政権になってから全然ダメだった)”を紹介しないのか、と。

 以上がマスコミ に於ける“偏向報道”の一例です。事実全てではなく、事実の一部を提示した上で、其れが事実全てだと見せかける、という手法です。

 皆さんにも覚えがあると思います。例えば「○○という国の××は素晴らしい!日本も見習うべきだ!」と。××の部分には社会制度であったり、製品名で あったりします。

 しかし其れが“本当に優れていれば、日本ならずとも他国が率先して取り入れている筈”なのです。にも関わらず大抵は其の国、または企業でしか行われてい ません。
 国や人種、環境や歴史によって辿ってきた道は様々です。砂漠で近代農法(水田を使った)を営むのが非常に困難なのに、「○○国では成功しているから!」 等と言って導入したりはしません。
 確かに“A国では”という前提があれば、社会制度なり製品なりは良かったのかも知りません。しかしだからといって環境が異なる(人種・人口・地政学、ま た一人当たりの平均所得)日本で行ったとしても、同じく成功はしないでしょう。

 そういった“前提条件”、此 の記事で言えば“無能な二人の前任者”を無視して「ここ数年で最も賢明なリーダー」という結論を導き出すのが、今の日本のジャーナリストのお仕事で す。
 背景に何があるのかとか、どうしてそうなったのかには一切触れず、特定の結論が先にあって、其れに結びつける――なんて言ったら侮辱罪で訴えられるので しょうか?
(尤も、私にしても某掲示板にて「原文と読売の文面が違う」と指摘される方が居なければ鵜呑みにしていたでしょうが)



 以後は極めて個人的な感想、雑談の部類へ入ります。

 私は幼心にプロ野球が嫌いでした。好きなアニメが放送しなくなったり、延長で番組が潰れる――と言うのも勿論ですが、何よりも解説者の話ですね。
 特定のテレビ局が特定の球団の試合を中継する際、片方のチームだけを延々誉めちぎる一方、もう片方は無視する(どころか点を取ると舌打ちする)という光 景を何度も見たからです。
 子供心に「あれ、テレビって公平に報道しなくてもいいの?」と思いつつも、「まぁでも他のテレビが追求しないんだから良いのかな」と割り切りつつ大人に なりました。

 そしてつい先々月、其の球団をすっぱ抜く報道がありました。


巨人、6選手に契約金36億円 球界申し合わ せ超過
http://www.asahi.com/national/update/0315/TKY201203140797.html
 プロ野球・読売巨人 軍が、球界で申し合わせた新人契約金の最高標準額(1億円プラス出来高払い5千万円)を超える契約を多数の選手と結んでいたことが、複数の 関係者証言と朝日新聞が入手した内部資料から明らかになった。
 14日現在で確認できたのは、 1997〜2004年度に6選手と結んだ計36億円の契約で、このうち計27億円が最高標準額を超過する内容だった。

 読売巨人軍は朝日新聞の取材に対し、「個別の 選手の契約は申し上げられない。最高標準額は07年までは上限ではない。プロ野球全体もそういう認識でルール違反ではない」と話している。
(以上引用終了)


 ……まとめれば、「新人契約金1億5千万円が上限なんだけども、実は其の倍〜9倍程度まで跳ね上げていました」という話なんですが……いや、ですから、 此、大事ですよね?
 スポーツマンシップがどう、 正々堂々がどうの、といった事を超越した、「札束で新人を奪い取った(しかも協定違反)」という代物です。
 うろ覚えですが、似たようなケースとして一場靖弘選手へ裏金を送った事件が明るみに出ました。あの時は全部合わせても300万円に届かない程度の額で、 関係した球団のオーナーや球団代表が辞任しました。

 其れで?今はどうです?生憎 と犀が住む日本という国では、事件が発覚した直後、また現在へ至るまで誰一人として、何処一つとしてニュースで取り上げる事はありませんで した。
(最初にすっぱ抜いた朝日新聞を除いては、です)

 貴方の住んでいる日本ではど うですか?漢字の読み間違い、体調不良による酩酊会見、顔に絆創膏を貼っただけで毎日毎晩、モーニングショーから昼のニュース、午後のワイドショーを経 て、夕方のニュースでもう一度、止めにイブニングニュースで駄目押しをし、日付を跨いだニュースでダイジェストを流していました
 政治(しかも犯罪行為ですら ない)に対してストイックな彼らが、自らや同業他社が関わった犯罪についてはどれだけ報道しましたか?

 野球の協 定一つ碌に守れない選手と球団を持ち上げ、そしてまた非難を一切しない人間達が、政治家へ対してモラルがどう、庶民感覚がどうと言っているんですよ?

 日本にジャーナリストは存在しません。あるとしてもマスコミで働いている方の殆どは事なかれ主義、スクープした朝日新聞にしても子会社のテレビ朝日を 使って追求するでもなく、続報は聞かれません。
 繰り返します。貴方は新聞やテレビを信じるのですか?
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