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被 災地の現状 〜衆愚政治〜

 今 日は被災地の現状をご報告致します。
 ではまず写真をご覧下さい。

 塩屋崎灯台近くの海岸沿いの道です。






 堤防が破壊されたままになっており、満潮時に少し高い波が来ると陸地まで波が届きます。

 不思議に思われる方もいらっしゃると思いますが、此の写真が撮られた日付は2012年5月28日、つまり今年の光景です。
 何が言いたいのかと言えば、震災後一年三ヶ月が経とう しているというのに、被災地の海岸線は全く復旧していないんですね。
 撮影した場所は福島県いわき市という所で人口約33万人の都市です。よって人も物も(地方都市にしては)多く、復旧事業も他よりも早く進められている筈 なのですが、現状は全く芳しくない状態となって居ます。

 阪神・淡路大震災、新潟中越地震等ではもっと早く復興していた気がします……まぁはっきり言いますが、現政府である民主党が極めて無能なせいです。


 被災地に住む日本国民としての意見ですが、人が住むには生活環境をある程度整備する必要があります。防災的な意味合いもありますが、其れ以上に“日常生 活”を営めるかどうかですね。

 まずは生活インフラの設備です。
最初は人と物資の移送の問題でしょうか。道路もそうですが線路や海路等、物資を大量輸送出来る施設が必要となります。
 上下水道、安定的な電力の確保、役所・公安設備の拡充と、人が地元で暮らしていける地盤を整えます。

 次に必要なのは“食”です。スーパーで買う、という話ではなく、如何に住民が賃金を得るかです。
 具体的には企業なり事業で雇用を確保し、また更に確保された従業員向けに商売が始まる、という繰り返しとなります。

 此所で大切なのはインフラだけ整えても意味がないという事です。例えれば(非常に悪い例えですが)熱帯魚を飼おうとしましょう。
 水槽の外側ばかりを豪勢にし、中には何も置かないのであれば直ぐに、数分と経たずに魚は死んでしまいます。
 魚にとって必要な餌を与え、水質(塩分濃度やph値)を調整し、岩端や砂地、海藻等の寝床を保全しなければ、長くは生きられません。

 尤も其れはあくまでも魚の例えです。公共事業など無くとも生きていける、原生林でも大丈夫だと仰る方も居るでしょう。人には知恵が有り、道具を活用出来 るのだから、と。
 しかし其れは“限られた一部の人間”であり、大多数ではありません。日常的に通院をされている方も居るでしょうし、車等の移動手段を持たない方も居るで しょう。
 加えて、熱帯魚で言う所の餌――生活インフラが碌に整備されていない所へ進出する企業はありません。よって地盤産業等が興る訳もなく。
(伝統的なもので多数を食っていけるのか、という疑問もありますし)


 以上の観点から被災地では生活インフラの復旧が、復興と同義なのですが……政府は一年三ヶ月、いやもう四ヶ月になると言うのに、一体何をしてきたので しょうか?


松本復興相、岩手・宮城両知事にきわどい発言 連発
http://www.asahi.com/politics/update/0703/TKY201107030246.html
 松本龍復興担当相は3日、東日本大震災の被 災地である岩手・宮城両県を訪ね、両県知事と会談した。前日の福島県に続く就任後初めての被 災地訪問だが、被災者の感情を逆なでしかねない発言を連発した。
(中略)
 会談では、仮設住宅の要望をしようとする達 増知事の言葉を遮り、
「本 当は仮設はあなた方の仕事だ」
と指摘。仮設住宅での孤独死対策などの国の施 策を挙げ、
「国は進んだことをやっている。(被災自治体 は)そこに追いついてこないといけない。知恵を出 したところは助けるが、知恵を出さないやつは助けない。そのくらいの気持ちを持って」
と述べた。また、
「九州の人間だから、東北の何市がどこの県と か分からない」
と冗談めかして話した。
 午後に訪問した宮城県庁では、応接室に後か ら入ってきた村井嘉浩知事に
「お客さんが来る時は、自分が入ってから呼 べ。しっかりやれよ」
と語った。被災した漁港を集約するという県独 自の計画に対しては
「県 でコンセンサスをとれよ。そうしないと、我々は何もしないぞ」
などと厳しい口調で注文をつけた。
(以下略)


 ――発言自体にも少なからず怒りを覚えます(後日詳しく取り上げます)が、まぁ一言で言えば、

『国 は何もしなかった』

ですね。
 具体的には地方の自 治体へ復興事業を丸投げ、本来であるならば国主導で大規模なインフラ復興(特に湾岸等の防災整備)をしなければいけなかったのに、一切、全くと言っていい 程に手をつけてきませんでした。
 まぁ未だ埼玉に福島県双葉郡の住民が避難していたり、被災三県で多くの方が未だに仮設住宅で暮らしていたりと、地元の人間であれば誰でも身に染みて実感 しています。


復興交付金、東北4県2523億円 申請の 1.6倍配分
(河北新報 5月26日(土)6時10分配信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120526-00000001-khks-pol
 復興庁は25日、東日本大震災で被災した自 治体の復興事業を財政支援する復興交付金の第2弾として、東北4県54市町村に2523億7000万円の配分を決めた。配分総額は8県71市町村で計 2611億9000万円。東北4県 では申請額の約4割が削られた第1次配分から一転、申請に対する交付額は約1.6倍に膨らんだ。
 復興庁は今回、自治体の多くが本年度の単年度事業費を求めたのに対し、被災集落を高台などに移す防災集団移転や災害公営住宅整備など、確実に実施が見込 める事業には2013年度分の費用も上乗せした。
 第1次で要求が4割以上削られた宮城県で は、前回除外された道路のかさ上げなどでほぼ満額が認められた。
 東北4県の内訳は表の通り。宮城、岩手、福 島3県は配分額が申請を上回り、交付率は118〜179%となった。
 市町村で配分額が最も多かったのは仙台市 で、県道整備や集団移転費用など373億7000万円だった。岩手県山田町の270億1000万円、石巻市の254億1000万円、陸前高田市の224億 7000万円が続いた。
(中略)
 3月の1 次配分では、被災自治体から「復興庁ではなく査定庁だ」(村井嘉浩宮城県知事)などと批判が相次いだ。復興庁は今回の配分で被災地の不満に配慮し た形だ。
(以下略)


 第一次予算をばっさり切っておいて非難されたから、今 度は申請額より配分を多くする――まさに衆愚政治の体現です。
 予算を組むに当たって(私は役場の中の人ではないので、民間での実体験に基づいた推測の域を出ませんが)必要なのは、まず“額”、其れと“仕事量”で す。
 復興計画に関してはまず期間毎にスケジュールを立て、必要な予算を計上した上で申請します。
ただし其の際に考慮へ入れなくはいけないのが、可能な仕事量です。

 被災地では復興事業としてあちこちで工事が進められていますが、其の殆どがフル稼働しています。というのも震災の被害があまりに大きいため、大中小全て の建設業へ仕事が割り振られています。
 また隣県や近隣県も似たような感じで、復興または防災の仕事が多く、とても他県まで足を伸ばすような事業は難しいのです。

 そして役所の中の方、官僚を含めた方は現場でどうなっているのかを知っている――要はどれだけの仕事まで出来て、どれぐらいからは出来ないのか、を把握 しています。
 従って“現地の人間が出した復興計画に超える予算を 貰っても、困る”と。

 素人の、しかも奇蹄類すら分かりそうな常識なのですが、当然起こるべくして起きる事は起きました。


震災予算8000億円余る 11年度、復興事 業の遅れ影響
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2702Q_X20C12A6EE8000/
 2011年度の国の一般会計予算に計上した東日本大 震災の復興経費のうち、使い残した8000億円程度を12年度に繰り越すことがわかった。財務省は7月上旬に復興経費を含む一般会計の決算 の概要を公表する。
 政府は11年度第1〜3次補正予算で、公共 事業費やがれき処理の費用など約15兆円の復興経費を計上した。だが、自治体に よっては想定したほど復興事業が進まない例もあり、使い残しが生まれた。
(以下略)


 国が主導して復興計画を立て、其れに大手を含む企業が参画して年単位で復興計画を進める――其れが理想的で、しかも過去の政府が採ってきた手段にも関わ らず、被災地は被災地だけの力で復興しなくてはいけないと事態へ陥っています。

 経済的な視点で見れば、8000億円分を余所へ回して遣えば其の分だけ経済効果も生まれますし、国主体の復興事業であれば助けになったでしょう。
 しかし安易な人気取りに大した意味もなく予算をつけた結果、8000億円が宙に浮いてしまいました。
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