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日 常 〜Uさんの家庭〜

  更新や記事の回数が遅れていますが、私生活が立て込んでおります。どうかご了承下さい。


 さて、今日はブログらしく私生活の話をしたいかと存じます。
(正確にはFC2社様の無料“HP”サービスですが、未だに違いがよく分かりません)
 まぁ世間話程度に聞いて頂ければ幸いです。


 私の同僚のAさんの話、仮に牛島さんとしておきましょう。私よりも年配の方なのですが、下ネタを飛ばしては大抵引かれています。
 仕事も出来るし人付き合いも良いのですが……まぁ少々“過ぎる”所があると言いましょうか。

 ともあれ数年前、牛島さんは離婚されました。原因は夫、つまり牛島さんの浮気です。ご本人曰く、

「本気だから浮気じゃない!」

と、訳の割らない寝言を仰っていました。中々人として最低の話(加えて私自身異性に縁がないため、妬みもあったんでしょうが)です。
 ともあれ奥様は激怒し、子供一人を向こうに引き取られ、煤けた背中のまま生きてらっしゃいました。自業自得なんですがね。

 其れがあったのが数年前、牛島さんから時々お子さん(定期的に会える)や、元奥様が再婚された話を聞かされていました。まぁ奥様は仕方がないとして、お 子さんとまで縁が切れるのは辛いでしょうし。

 牛島さんはお子さんをとても大切にしており、勉強があまり宜しくないのを挙げても、

「俺の子なんだから仕方がない!」

で済ませていたそうです。男性としてはおおらかかも知れませんが、果たして父親としては如何なものかと思わなくもありません。


 浮気をした相手とはどうなったのか、また私生活はどうなっているのか、は知りません。興味がないわけではないのですが、言わないのですから聞かないでい ます。
 只、端から見る分には。離婚後も牛島さんは生き生きとしており、割と毎日が楽しそうだな、との感想を抱いています。一度や二度の失敗でめげることなく、 前向きに生きている、と。
 特にそう感じたのは、牛島さんの通勤車がファミリーワゴンだったのに、いつの間にかドカティ(イタリア製のバイク?よく分かりませんが)に変わっていた 事です。
 色々家庭のために我慢していたのかと同情する反面、他人事ながら寂しさも感じました。


 人にとっては非凡であっても、牛島さんにとっては平凡な人生――の、筈だったんですが、3.11の震災でやはり大きく変わってしまいました。


 震災から半年程経ったある日、私は相談を持ちかけられました。奥様と連絡が取れない、と。
 何でもお子さんの養育費(兼慰謝料)の引き落としはされているが、携帯へ連絡しても繋がらないのだとか。また離婚の際の話し合いではお子さんと会える日 を決めていたのに、其れを過ぎてしまっていると。
 住んでいる所へ行っても新聞受けには大量のチラシが入ったまま、近所の人に聞いてみても二ヶ月ぐらい見ていない。
 仕事を辞めて探しに行くべきだろうか、と。

 私の手には余る話だったので、取り敢えず専門家(弁護士)を間に立てて交渉する、もしくは事件性があるものだと警察に相談する、ぐらいを勧めておきまし た。
 何をするにせよ素人が動いてどうこう出来る案件じゃないでしょうし、そもそも杞憂に終わったら笑い話では済まなくなりますよ、となだめると、牛島さんは 落ち着き、仕事の合間に何処かへ電話を掛けていたようでした。


 そんなことがあってから更に三ヶ月程経過した年末。結果どうなったのかの興味が失せるぐらい経過した頃です。

「ちょっと神奈川まで車出してくれないか?」

 唐突に言われて困惑しました。せめて理由を教えて欲しいと問うても牛島さんは、お前は聞かない方が良い、と。
 付き合う義理もありませんし(事情を話されないのであれば)、ましてや忙しい年末の話(上司と先約があった)ため、お断りしようとしました。
 ですが、牛島さんのせっぱ詰まった、思い詰めた雰囲気に呑まれて同意しました。一応事情を上司(頼りにならない人)の上司(頼りになる人)に話しておく 事も忘れずに。
 ……正直、何かを埋めに行ったり、バールのようなものを準備してやいないかと、内心冷や冷やしていたのですが。


 ともあれ私の心配を余所に当日はやって来ます。高速を通り、型落ち品のカーナビに苦労しつつも、神奈川県某所へやって来ました。
 指定されていた場所には一人の人影がありました。小柄で線の細い少年です。

 牛島さんは車を降りて彼と一言二言言葉を交わし(聞こえませんでした)、彼の肩から提げている大きなバッグを持ち、二人で車に乗り込みました。

 帰り道、私が音楽を聴きながら高速道路を走らせていると、牛島さんの携帯に着信がありました。
 あまりよく聞こえなかったのですが……まぁ断片的な部分だけ。


「……だから何?子供ほっぽり出して男漁りに出んのが正しいのか、あぁ?」

「いいか、お前は“逃げた”人間だわな。悪りぃとは言わねぇし責めるつもりも無ぇ。只、もしお前が本気でやり直してぇんだったら、どうして今そっちに居る んだ?」

「やり直して貰ったら困んだろ?お前は被害者面して同情されてーだけじゃねぇのか?言い訳にしてぇだけなんだろ?」

「……あのな、いつまでもンな生活続きっこねぇぞ。五体満足な人間が働きもしねぇで人様の善意で食わせて貰って、社会に受け入れられる訳が無ぇわな」

「お前が何処で何をしていようが俺には関係無い。ただし子供を巻き込むな、子供をダシに遣うな。お前の所有物じゃねぇ」


 ……聞いている内にもらい泣きしてしまいそうな程、牛島さんの言葉には力が籠もっていました。

 其の後、詳しくは言いませんでしたし、聞きませんでした。
 牛島さんは今日も元気に出社しては、下ネタを飛ばして失笑を買っています。
 以前と比べて何一つ変わっていないように見えますが、彼の駐車スペースにはバイクではなく、型落ちした軽自動車が駐まっていました。



 ……あぁちなみに数ヶ月前からの約束をキャンセルしてしまった私は、上司から大量の仕事を押しつけられ、除夜の鐘を社内で聞く羽目(二年連続)になりま した。まぁ其の話は機会があればまた何処かで……。
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