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公 共事業は悪なのか? 〜西日本豪雨〜

 私 が小さな頃、仮面ライダーという特撮ヒーローがありました。私だけでなく、ブラウン管の前で多くの少年が彼の活躍に一喜一憂し、声援を送った事でしょう。
 また彼でなくとも其の時代時代には某かのヒーロー・ヒロインがおり、日本の子供達は彼らを見て大きくなってきました。
 基本的には勧善懲悪物が多いのですが、時折悪役側からの視点で描かれる事もあり、其れを見ては「善悪はとは人の立ち位置によって変わる」――等と悟った のは、随分後になってからでした。
(流石に放送時に理解出来る程、賢い子ではありませんでしたので)

 今日はそんな立ち位置の話をしたいかと存じます。


 日本のバブルが弾けて約20年、日本政府は公共事業を絞ってきました。やれ無駄だと天下り先の確保だの言われつつ(また其の指摘も一部は正しかったので すが)、諸外国と比べてもGDP比率で少なめに計上してきました。
 そんな事態が何故まかり通ってしまったかと言えば、マスコミ各社が『公共事業は悪だ!』と言い続けた結果に過ぎません。我々国民も何となくそうなのか な、と公共事業に反対する政治家を推し、彼らが当選する事で徐々に減っていきました。

 とは言え、です。インフラには寿命があり維持費もかか ります
 例えば橋の場合、交通量が多ければアスファルトの減りも多いし、振動で少しずつ緩衝材は磨り減っていきます。不測の事故でガードレールが破損する事だっ てあるでしょうし、其の際には順次補強しなければいけません。
 また過去に水害に見舞われた所では、新たにダムや護岸 などの治水対策をしなければいけませんでした。此は人命と財産に直結する話なので割と急務です。
 財産とは一般国民だけでなく、企業や法人の経済活動も含まれます。2011年に起きたタイの大洪水で莫大な額の設備投資と雇用が失われました。会社に よってはタイの治水対策が充分に成されないと、戻らない所もあるでしょうし。

 よく時の政権、自民党に関しては”土建屋(此の呼び方は差別ではないかと私は思いますが)との癒着”が指摘されています。また幾ばくかのキックバックと して政治献金を受けている、と。
(しかしトヨタ辺りの大企業へ補助金を出して誘致したり、労組からの補助金は取り扱わなかったり、マスコミの報道姿勢には疑問があります)
 まぁ其れらの一部はそうですし、其の通りだと思います。献金や票を受けていたのも事実だと思います。其れはある意味”悪”だと言って良いのかも知れませ ん。

 ですが、其れは一体” 誰”の立場から見た視点でしょうか?少し考えてみて下さい。


 冒頭で挙げた特撮モノで子供達はヒーローを応援していました。ヒーローは子供達(や、彼らを取り巻く環境)を護っているからです。反対に敵側にも其れな りの理屈や信念・信条があり、世間様から見て悪であっても、彼らにとって自身は正義なのでしょう。

 同様に公共事業が”悪”と決めたのは誰でしょうか?企業献金にせよ、其れが違法でないにも関わらず、また組織票が犯罪でないのに何故か癒着であると非難 され続けてきました。
 まぁ言い続け てきたのはマスコミやジャーナリストの方々ですね。彼らにとってすれば”悪”であり、其れがあたかも日本国民にとってもそうであるかのような報道を続けて きた、という其れ以上でもなく以下でもありません。


 視点を変えてみましょう――此だけ世論の風当たりが強 くなっている(と、錯覚させるような空気を形成した)中、どうして政府は公共事業を続けなければならなかったのか、と。


 2007年参議院選挙、2009年衆議院選挙では「コンクリートから人へ」をキャッチフレーズに掲げた政党が躍進し、ついには政権交代が成されてしまい ました。
 彼らは事業仕分けと称し、予定されていた公共事業を停止しました。代表的な物は八ツ場ダムでしょうか。


【政治】 民主党の政権公約で「中止」の八ツ場ダム 建設再開する方向で調整に…政府
(2011/12/17)
http://www.47news.jp/CN/201112/CN2011121601002369.html
 政府は16日、政権交代 後に中止を表明した八ツ場ダム(群馬県)の建設を再開する方 向で最終調整に入った。政府首脳は同日夜、記者団に「22日までに前田武志国土交通相が最終判断する」と述べ、国交省首脳も「(早期に完成する)代替案が ないのに、途中で止めるのは無責任極まりない」と話した。政府は週明けから民主党と詰めの協議に入り、正式決定する方針。
 八ツ場ダ ム中止は、民主党が政権交代を果たした2009年の衆院選で掲げた政権公約


 一度予算の執行を停止した上、更に数年が経って認める――という訳の分からない行動です。
 何故彼らが公共事業を続けなければならなかったのか、といえば、其れは”必要” だからです。

 奇しくも”耳障りの良い、其の場其の場でマスコミが唱 えるご都合主義を掲げれば、どんなに実務能力が欠けていても政権を盗れる”事を証明しました。特に旧社会党出身者が多い民主党は、半世紀近く”脱・公共事 業”と言い続けてきました
 マスコミの尻馬に乗ったのか、野党側の意を汲んだのか分かりませんが、兎に角公共事業を悪だと国民へ刷り込みを続けてきました。
 しかし当時与党 であった自民党は最後まで公共事業を続けてきました。恐らく「公共事業を全て止める!そして福祉に充てる!」と、言えば支持率は高くなったであろうのに、 です。

 衆愚政治というかポピュリズム(人民主義)、もっとばっさり言えば日本のマスコミが提唱した、

「ぼ くのかんがえたりそうのせいじ」
(財 源・維持費・対外影響・国益を一切無視した代物。子供の作文未満の完成度)

をしていれば、ある程度支持を得たのに彼らはしませんでした。其れは何故でしょうか?
 其れは――”日本国 民にとって必要だったから”です。


九州北部豪雨「民主党の仕分けで氾濫」 谷垣 自民総裁(2012/07/17)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120717-00000558-san-pol
 自民党の谷垣禎一総裁は17日の党役員会 で、16日に九州北部 豪雨被害の視察のため熊本、大分両県入りしたことに触れ、「大分県竹田市の災害現場ではダム建設済みの河川は氾濫していない。一方、民主党の事業仕分けに よってダム建設が延期になっている場所が氾濫している」と指摘した。
 自民党は東日本大震災を踏まえ、災害に強い 国土を目指す「国土強靱(きょうじん)化基本法」をまとめ、10年間に200兆円規模のインフラ整備への集中投資を目指している。谷垣氏の発言は、これを 念頭に防災対策の必要性を強調したものだ。


大分県公式サイトより
玉来ダムに関する国土交通省の対応方針決定に ついて(ダム検証における検討の場)
http://www.pref.oita.jp/soshiki/17200/damukentou.html
 一方、玉来ダムは、平成3年度の事業採択以 来、ダムの調査に着手し、平成21年8月にダムの位置及び型式が決まり、平成22年度より詳細設計、用地測量等の本体工事着手に向けた準備作業にかかる予 定でした。
 しかしながら、国の「で きるだけダムにたよらない治水」への政策転換に伴って、国土交通大臣から平成22年9月28日に「ダム事業の検証に係る検討」の要請を受け、県として「検 証作業」を実施することとしました。(引用)


 何というのか、こう、沖縄のアメリカ軍基地問題でもそうなんですが、人気取りと国民の安全を秤に掛け、絶対に実現出来ない(すれば大きく国益を損なう) 方向を採用しています。


前原内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成22年8月27日
http://www.cao.go.jp/minister/0909_s_maehara/kaiken/2010/0827kaiken.html
 できるだけダムに頼らない治水、こういった こともやってまいりました(発現引用)
 民主政権での方針により、大分県の玉来ダム 工事が延期になり、このため、大分県では、行政・学識関係者・地域住民で「検討」が行われ、「ダム建設+河川改修(済)」案が妥当という結論になりまし た。
 「できるだけダムに頼らない治水」の1年 後、平成23年10月末に国土交通省より「継続」方針に戻りました。


 実際に上記のダムが、予定通りに着工されていれば完成していたのかは分かりません。(規模から察するに無理だったと思いますが)また水害を防げたのかも 推測の域を出ません。
 しかし長く続い た(半世紀は言い過ぎでしょうか?)脱・公共事業論が無ければ、ダム計画はもっとスムーズに立てられ、計画は前倒しで行われ、多くの国民の命と財産を護っ たと私は確信しています。


 あぁそう言えば公共事業がマスコミ等の”悪”になっているか、の話もありましたね。
 極めて優 れたインフラ設備(此以上補強出来ない程の)首都圏に本社を置き、対価を払えば幾らでも各種サービスを得られ、河川の氾濫の心配等、これっぽっちもしない 記者の方々からすれば、確かに公共事業とは”悪”なのでしょう。
 むしろ自分達に関わり合いのない人間が不幸にあえばあうだけ、取材対象が出来て美味しいぐらいに考えているのかも知れませんし。

 しかし――そうですね、よくこう言った豪雨や台風の際に、田んぼや船舶を見に行って亡くなられる方の話を耳にするかと存じます。多くの方は亡くなられた方へ「命を落とす程大事な物でもないだろ う」という感想を抱かれると思います。
 ですが実際に其 れ(田畑や船舶)を使って生計を立てている方にとってすれば、”ご自身の命ぐらい大切な商売道具”であるのもまた確かでしょう。
 当事者でなければ分からないのは当然――同様に地方で河川が氾濫し、命が危険に晒され、経済的に困窮する人間の苦しみも、都市部に住まうマスコミの方に は理解出来る訳がありません。


 2012年07月22日の朝日新聞には「災害を公共事業の理由に使うな!」と書かれてあり、朝からげんなりしてしまいました。都市部に住み、都市部の人 口に見合った高度なインフラ(電車が数分単位で来るような)と比べ、地方も同様にしろとは言いません。
(ちなみに私の住んでいる所は30万人を超える市ですが、一時間に一本あれば良い方です)
 ですが生命や財 産に直結するような治水事業、また老朽化してきたインフラの整備、更には発展するために必要な先行投資までするな、とは一体マスコミは何を考えているので しょうか?
 そもそも其の言葉を九州で言えますか?汚泥が押 し寄せた家屋に住む方や、家が流された方へ対し、「公共事業は悪だからするな」と。


 しかしこうやって文字に書き起こしてみると、脱・公共事業論を唱えるマスコミは善悪の範疇に収まりませんね。正義なり悪なり、どちらへ寄るにせよ利益を 共有する方が居ます。
 が、マスコミの言う通りに公共事業を減らした結果、景気は悪くなり、環境インフラも劣化していくという、まさに”誰も得をしていない(誰得)”状態へと 陥っています。
 もっとはっきり言えばマスコミ とは独善でしょうか。善意なのかも知れませんが、彼らとってだけ”は”という但し書きのつく正論



 余談です。
 ヒーロー、とは少し違いますが、某匿名掲示板にも「四次元殺法コンビ」と言う物が居ます。いやまぁ居るというかコピペ(コピー&ペーストの略)と言いま しょうか。
 誰が作ったか分からない台詞を、誰かが賛意(か批判)を込めて、其の文言と一致一区違わずコピーとして匿名掲示板へ書き込む、というものです。中には驚 かせられる程よく出来た物があるので、ご紹介しましょう。


良い子の諸君!

よく頭のおかしいライターやクリエイター気取りのバカが
「誰 もやらなかった事に挑戦する」とほざくが
大 抵それは「先人が思いついたけどあえてやらなかった」ことだ
王道が何故面白いか理解できない人間に面白い 話は作れないぞ!


 成程、良い事言いますね……おや?そう言えば、公共事業を廃止して人気を取り、給付と称して現金を配って人気を取り、在日米軍を撤退させて人気を取れば 良いのに、全ての政権はやってきませんでしたね。
 其れはつまり思いつかなかったのではなく、敢えてやらなかった、と。
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