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其の新聞、お金を出してまで読む価値ありますか?

 〜中日新聞「調子に乗りすぎるなよアベノミクス。」(※原文ママ)〜

夕歩道
http://www.chunichi.co.jp/article/column/yuhodo/CK2013012902000257.html
 日銀の物価2%目標の深い意味を銀行マンが教えてくれた。
…ゼロ金利以下には金利を下げられないから、物価 2%になるまで金利は上げません、という時間を使ったいわばマイナス金利なのさ。
 似た話は少し前のヘリコプター・ベンと呼ばれた男。飛行機乗りじゃない。
 大国アメリカの金融政策を決めるベン・バーナンキFRB議長。ドル紙幣をどんどん刷ってヘリでばらまけ、とほえた。
 いずれも銀行に預けた貯金の値打ち は、時間のたつほど減ってゆく。だからお金を使えという。
 でもお金が回ることと、お金を無理に使わせることはちがう。
 調子に乗りすぎるなよアベノミクス。
(引用終了)


 ……まぁどこから突っ込むべきか難しい所ですが、と言う言葉を今年に入ってから何度書いたのかも忘れましたが、兎に角一つ一つ拾っていきましょうか。
 ――の前に一つお断りを。万病に効く薬がないように、何に対しても有効な政策はありません
 例えばインフレ(物価上昇)が起きている国とデフレ(需要が減っている)になっている国があったとして、それぞれ対象法は異なります。
 高血圧を病んでいる方―低血圧用の(血圧を上げる)薬を処方しても、其れは意味が無いどころか猛毒になりかねません。
 また同じ病を抱えていても、物事には優先順位というものがあります。風邪でフラフラしている病人へ対して、「体力をつけるためにも運動をしろ!」と診断する医者は居ないでしょう。


 さて、まずはベン・バーナンキ氏についてです。氏は連邦準備制度理事会 (FRB) 議長、連邦準備制度とはアメリカの中央銀行(を統轄する)機関の長、日本では日本銀行の白川氏と同権限を有するのでしょうか。
(GDP世界一位と三位の中央銀行の長なので、金融政策に多大な影響力を持ちます)


日米「質的緩和」を検証(2009-0113)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/468
 1月13日、バーナンキFRB議長はロンドンで講演した。日銀がかつて手掛けた量的緩和と対比しながら、今回導入した自らの政策を「Credit Easing」と命名した。直訳すれば「信用緩和」となるが、リスクのある金融商品を抱え込み、資産の質を落とすことで緩和効果を狙う意味では、「量的緩和」ならぬ「質的緩和」という表現が妥当だろう。
(引用終了)


 以上の記事は2009年初頭のものですが、此の時期氏がやっていたのは“住宅ローン担保証券などを1.75兆ドル買い入れる”事をしました。
 此はFRBの資産の信用性を落とすと共に、元々不良債権化する“かも知れない”債権を公的機関が買い取る事で、本来失う筈であった銀行や個人のリスクを引き受けています。
(サブプライム直後で安定する間までは、と言う事です)
 そして同時期にはこんな金融緩和を取りました。


Secretary of the Fed REVIEW & OUTLOOK MARCH 20, 2009
Fed省長官のようなバーナンキ (WSJ社説)(2009-0309)
http://online.wsj.com/article/SB123750959910890623.html
 昨日のFRBの思い切った国債買取などの金融安定化支援政策へのWSJのコメンタリー。バーナンキ議長はデフレ(と恐慌)に陥ることを防ぐためには、いまや何でもやる覚悟のようだ、と驚きを見せる。
 この評論は、FRBの政策自体に特に強く反対しているともみえないけれど、二つの懸念を指摘している。
@市場は思い切った政策に安心しているわけではなくて、ユーロや金価格の高騰に見られるようなドルの減価と、将来のインフレの可能性を気にしている。
A バーナンキFRB議長は独立した中央銀行総裁というよりは財務省の一部とか、その同類であるFRB省の長官であるかのように見える、とWSJは皮肉を書い ている。財務省とFRBの協力関係が良好であるのは良いとして中央銀行が政治的独立性を疑われるかねない振舞いは良くない、という。
(引用終了)


 具体的には6000億ドルを超える米国債をFRB(要はアメリカの中央銀行)が買い取り、其の分だけ、市場へ資金を流すと言う方法です。
 以上の手腕からバーナンキ氏はヘリコプター・ベンと揶揄されます。まぁ正確には“されていた”と言うのが正しいでしょうが。

 とまぁ読んで頂ければご理解頂けると思いますが、

バーナンキ氏が民間金融機関の不良債権を買い取ったのは、市場の安定とドルの弱体化(遠回しなドル安にして輸出を強化)を狙ったもの
アメリカ国債を中央銀行へ引き受けされ、資金の流れを活性化させるのが目的

です。
 其れに対し中日新聞の記者の方が仰ったのは、

「いずれも銀行に預けた貯金の値打ちは、時間のたつほど減ってゆく。だからお金を使え」

ですか?本当に中日新聞は経済を理解出来ていないのでしょうね。
 バーナンキ氏は其の銀行の資産を守るために不良債権予備軍を買い取った、と言う事実すらまともに読めないのでしょうか。
 もしも氏が貯金の値打ちとやらを下げたいのであれば、不良債権化するまで放置すればいいだけの話なのですが、恐らく其の程度すら分かっていません。
 可能性としてはご友人の銀行員の方が、「莫迦に話をした所で理解出来ない」と思われているので、出鱈目な話を吹き込まれた可能性も高いと思います。

 まぁ仮に百歩譲って、中日新聞の記者さんやご友人の意見が正しかったとしましょう。ですがだからといって其処に一体なんの問題があるのでしょうか?
 バーナンキ氏の金融緩和の柱は二つ、FRBによる不良債権の買い取り、並びに中央銀行による自国国債、加えてインフレ・ターゲットを定めた政策を取っているのですが……結局、“日本の現政権がやろうとしている事を、数年前から実行している”んですよね。
 では氏のインタビューをどうぞ。


Neo Economistの視点/2011年6月30日]米国FOMCにおけるバーナンキ議長発言をめぐって
作成: The Neo Economist 日時: 2011年6月29日 19:45
http://www.facebook.com/note.php?note_id=241087085903030&comments
(よりバーナンキ総裁の発言を抜粋)
 私が言いたいのは、断固たる決意を持った中央銀行(determined central bank)は常にデフレに対して行動する余地があるということだ。結局、インフレは貨幣的現象であって、中央銀行は常にマネーを創造するといった手段をとることが可能である。
 また私は次のような点−根深いデフレは経済成長や雇用を衰弱・停滞させる要因であることは広く理解されていると思われること−を論じた。
 よって、我々FRBは既に述べたように昨年8月、9月にこの教訓に従って行動した。当時はTIPSや物価連動債の価格からも、投資家が考えるデフレが将来生じる可能性が3分の1のオーダーに達するということが推測できる状況で、明らかなリスクがそこにはあった。
 我々が行った国債買い取り(QE2)は、デフレのリスクを収束させたとみなすことができる。そしてデフレのリスクをFRBが終わらせるのに成功したと広く認識されていると考えている。又、私は我々の政策が雇用面に対しても建設的な効果をもたらしたと考えている。
(以下略)


 其れでバーナンキ氏の金融政策の結果、どうなったかと言えば、


米失業率改善 オバマ大統領に追い風(2012-1005)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121005/t10015559801000.html
 アメリカの9月の雇用統計が先ほど発表され、失業率は、前の月より0.3ポイント改善し7.8%に下がりました。アメリカの失業率が8%を下回ったのはオバマ大統領が就任した2009年1月以来です。
(以下略)


と、時間は掛かりましたが、アメリカの失業率は下がっている、つまり景気は良くなり雇用が増えていると言う“結果”を出しました
 ちなみに外的要因を挙げればギリシャ・イタリア・ポルトガル、更には中国の土地バブルが弾けてむしろマイナス要因になっています。である以上、アメリカの雇用が回復したのは内需が増えた、と見るのが普通でしょうね。

 其れで?中日新聞さん?貴方方はバーナンキ氏を「ヘリコプター・ベン」と揶揄しました。ですが現実ではバーナンキ氏はしっかりとした“結果”を残しています。
 具体的には不良債権の買い取りやら、国債の引き受け、インフレターゲットの導入等の量的緩和をし、アメリカの雇用を守り内需を増やし、雇用を守りました。

 そしてまた数年前にバーナンキ氏が仰ったように、日本もまた同じような政策を取ろうとしているのですが――どうして其れが「調子に乗りすぎるなよアベノミクス。」と言う暴言に繋がるのでしょうか?
 実際に成功した政策、しかも対デフレというアメリカと同じ病を抱える日本にとって、同じ処方箋で同じ薬を飲むのは当然の話ではないでしょうか?
 其れとも対案の一つも出さず、実在するかどうかも分からない(そして少なくとも金融の知識が素人よりも劣る)銀行員に、上っ面だけの批判をさせておきながら、最後に「調子に乗るな」とは、一体誰が、どんな立場から発せられているのか、私には到底理解出来ません。
 バーナンキ氏が失敗したのであれば兎も角、成功した人間の、其れも一部でしか使われていない「ヘリコプター」と言う揶揄を出して悦に浸る。其処にはもう経済と言う立場にすらない、只の暴言です。


 繰り返します。今の日本の新聞やテレビの“質”とは此の程度なんですね。過去の記事を碌に読まない所か、素人にも劣る見解しか持てない専門家(時には芸人)を引っ張ってきて、出鱈目な感想をつけるだけのお仕事です。
 はっきり言いますが、中日新聞を購入するのはお金の無駄です。現政府の金融政策、つまり其れは私達の生活に直結する重要な案件なのは間違いありません。
 其れを分析もせず、過去の記事や実際に実行に移した事例を上げるわけでもなく、口から出るのは「調子に乗るなよ」ですか。そんな新聞に貴方がわざわざ対価と時間を費やして、読む価値があるとは思えません。

 そろそろ新聞とテレビを捨てては如何でしょうか?ニュースはネットがあれば充分ですよ、其処には記者の“妄想”は入りませんしね。
 また貴方は貴方の子供に「調子に乗りすぎるなよ」等と書かれた新聞に読ませるのが、果たして良い影響を与えるでしょうか?



文責;弾犀@奇蹄類


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