header
 トップへ | 此のサイトについ | ご意見・ご要望のメール

WHOの放射線レポート 〜複数の新聞を比べてみる〜

 WHO(世界保険機構)が放射線についてのレポートを発表しました。出来ればもっと大々的に扱って欲しいのですが、まぁ其れは置いておきましょうか。
 今日は幾つかの新聞社の取り上げ方を比較してみましょう。勿論全て同じの同じニュースソースを元に、各新聞記者が記事を書いています。


 ではまず北海道新聞の記事から見てみましょう。


福島原発事故、発がんリスクやや上昇 WHO報告書公表
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/topic/445313.html
 世界保健機関(WHO)は28日、東京電力福島第1原発事故による周辺住民や原発作業員の健康への影響に関する報告書を公表した。甲状腺がんのリスクが最も高まるのは原発周辺の1歳女児で、福島県浪江町の女児は生涯に甲状腺がんにかかる確率が0・52ポイント上がって1・29%となり、日本の平均的な1歳女児の発がんリスクの約1・7倍となった。
 WHOの専門家による調査団は、2011年9月時点で得られた放射線量のデータを基に住民の被ばく線量を推計、がんの発症率を算出した。
(引用終了)


 ふむ。以上を読むに“福島県浪江町の女児は平均よりも1.7倍発癌リスクを負う”と。
 0.52%が1.29%へ上がるのは誤差の範囲――しかし子を持つ親にとっては無視出来ない値だと思います。
 では次に朝日新聞社を見てみます。


福島原発、甲状腺がんリスク増加も WHOが報告書発表
http://www.asahi.com/national/update/0228/TKY201302280465.html
  【前川浩之=ジュネーブ、大岩ゆり】世界保健機関(WHO)は28日、東京電力福島第一原発事故の被曝(ひばく)による健康影響に関する報告書を発表し た。大半の福島県民では、がんが明らかに増える可能性は低いと結論付けた。一方で、一部の地区の乳児は甲状腺がんのリスクが生涯で約70%、白血病なども 数%増加すると予測した。日本政府は、「想定が、実際とかけ離れている」と不安を抱かないよう呼びかけた。
  WHOはまず、環境の線量などから被曝線量を推計した。計画的避難区域の住民は事故後4カ月避難せず、県内産のものしか食べなかったという前提で推計し た。この線量をもとに、当時1、10、20歳の男女の甲状腺がんと乳がん、大腸がんなどの固形がん、白血病になるリスクを生涯と事故後15年で予測した。
  この結果、被曝線量が最も高いとされた浪江町の1歳女児は生涯で甲状腺がんの発生率が0・77%から1・29%へと68%、乳がんが5・53%から5・ 89%へと約6%、大腸がんなどの固形がんは29・04%から30・15%へと約4%増加、同町1歳男児は白血病が0・6%から0・64%へと約7%増加 すると予測した。
(引用終了)


 大半の福島県民は癌の増える可能性は低く、一部の地域では甲状腺癌が生涯で70%、白血病が数%増加すると予測。後は大体同じですね。
 只まぁ0.77%から1.29%へ上がったのを「約70%上昇」と評するのは、何か嫌な感じがします。

 北海道新聞と朝日新聞のタイトル、両方とも『癌を発症する可能性の増加!』“だけ”と言うのも少し嫌な感じがします。報告書では“最悪のケースを想定すれば”と前提がある以上、其れを入れて欲しいものですが。

 では最後に時事通信をご覧下さい。


最悪想定ならがんリスク増=疫学的には「可能性小さい」−WHO、原発事故影響報告
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2013022800951
 【ジュネーブ時事】世界保健機関(WHO)は28日、東京電力福島第1原発事故による住民らへの健康影響の予測をまとめた報告書を公表した。報告書は最悪の想定を前提に健康リスクを分析したもので、疫学的にはがんが増大するリスクは小さいとする一方、最も影響を受けた地域ではがんのリスクが一定程度増大するなどとも指摘した。
 報告書は、避難地域に4カ月滞在し、事故当初の食材のみを食べ続けたと仮定するなど、最悪の想定の下に分析。また、2011年9月までのデータを基に、事故による住民の被ばく線量を最大限見込み、低線量被ばくでも線量に応じて健康影響が生じると仮定した。その上で、白血病、乳がん、甲状腺がんなどに罹患(りかん)するリスクを評価した。その結果、事故による放射線によって甲状腺がんなどの増加が確認される可能性は小さいとし、福島県外や日本国外では発症リスク増加は無視できる水準だと述べた。
 しかし、最も放射線量の高い地域で、事故当時1歳の女児が被ばくしたと想定した場合、89歳までに甲状腺がんになる確率は通常の0.77%から、1.294%に上昇すると推定。この場合、甲状腺がんに罹患するリスクは最大70%増大するとした。
 また、同地域で1歳の男児が生涯に白血病にかかる確率は通常よりも7%増加。同地域で1歳の女児が生涯に乳がんにかかる確率は通常よりも6%増加すると分析した。さらに同地域で1歳の女児が生涯に固形がんにかかる確率は通常よりも4%増加するとした。
 次いで影響を受けた地域では、生涯の発症リスク増加は最も影響を受けた地域の約半分と指摘した。(2013/03/01-01:52)
(引用終了)


 時事通信は先に挙げた二つの新聞よりも詳しく書いてある上、“最悪を想定すれば”と但し書きも入っています。妥当……でしょうか。
 また他の新聞では書かれていない文言が入っています。抜粋してみましょう。


その結果、事故による放射線によって甲状腺がんなどの増加が確認される可能性は小さいとし、福島県外や日本国外では発症リスク増加は無視できる水準だと述べた。


 ……いや、此、一番大事な部分でしょう?どう考えても、今回の報告書の一番の肝、大事な部分であるのに他の新聞は無視ですか。
 また実際に女児が被曝している例を上げても、想定があまりにも“最悪”を取りすぎています。
 “乳幼児が避難地域に4カ月滞在し、事故当初の食材のみを食べ続けた”、なんてのは有り得ない前提ですし。
(食べ物は兎も角としても、少なくとも四ヶ月間屋外に放置し続ける親は居ないでしょうし)


 今日は三つ程新聞を読み比べてみました。貴方のご感想は如何でしょうか?
 公称数百部の北海道新聞並びに朝日新聞は、報告書の一部のみ、“最悪の想定”と言う家庭のデータのみを掲載し、本当に大切な一文、

『福島県外や日本国外では発症リスク増加は無視できる水準だ』

を省くのが、日本の自称クオリティペーパーのお仕事です。
 彼らが事実を書かなければ書かないだけ、私達福島の復興は遠い道である、と。


文責;弾犀@奇蹄類


人気ブログランキング様へ参加致しました。記事にご賛同・ご理解頂いた方は、下記バナー画像をクリックして下さると私のブログへ票が入ります。どうぞ宜しくお願い申し上げます)
inserted by FC2 system