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美味しんぼの風評加害を糾弾する 〜まずは何を言っているのか?〜

 昔々、子供の頃に道徳教育で広島・長崎の原爆について扱った本を読みました。
 その本には『ピカの毒が〜』と、科学的根拠に欠けた偏見が広がり、同県に住む日本人が言われ無き差別を受けてきた、と非常に考えさせられる内容でした。
 当時の私は『恐らく無知から来る差別であり、正しく実態を伝えれば是正されたのであろう』などと(文言は流石に違いますが)思ったものです。

 それから時は経ち、東日本大震災で不幸な事故がありましたが、

『現実は自分の利益のために風評被害を好んでする連中が次から次と出てくる』

と。あぁ成程、当時もきっとそうだったんですね。
 要は『未知へ対する無理解ではなく、詐欺師が人々を騙すために差別していた』と私は理解しています。


 さて、今週は雁屋氏が原作を勤めている『美味しんぼ』が新しい話が出て来たので、取り上げたいと思います。
 はっきり言って常軌を逸した内容になっているので、関わり合いになりたくないのが本音ですが、まぁそうも言っていられないでしょう。


今の福島「住んではいけない」=前町長ら発言−「美味しんぼ」
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2014051200169
 週刊「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)連載中の漫画「美味(おい)しんぼ」で、主人公が東京電力福島第1原発を訪問後、鼻血が出たとの描写が波紋を広げている問題で、最新号が12日発売され、登場人物が「今の福島に住んではいけない」などと発言していることが明らかになった。
 最新号では同県双葉町前町長の井戸川克隆氏が前号に続き登場し、鼻血や疲労感の原因について「被ばくしたから」と説明。東電や国の対応の問題点も踏まえた同氏の発言を受け、他の登場人物に「自身の体験をもとに考えに考えぬいた言葉。嘘(うそ)偽りなく重い」と語らせている。
 福島大学の荒木田岳准教授も登場し、「福島を広域に除染して人が住めるようにするなんて、できない」と発言。登場人物は「これが福島の真実」などと述べている。
(以下略・引用終了)


 2014年5月12日発売の週刊誌に書かれていた内容を挙げると以下の通り、

鼻血が出るのは被爆したのが理由
多くの県民が鼻血を出している
福島は除染をしても意味が無い
福島は人間が住める土地ではない
がれき処理を受け入れた大阪では、処理施設周辺の約800人が不快な症状を訴えている

だ、そうです。一言で言えば狂っている。もっと言えば狂人の妄想の域を出る話ではない。
 取り敢えず一つ一つ反論していきましょうか。


 まず科学的な側面から。京都大学医療課の学長が『科学的に有り得ない』が明確に否定されています。


京都医療科学大学長「(美味しんぼ鼻血描写、)科学的にありえない」
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140512/dst14051222400016-n1.htm
 京都医療科学大学の遠藤啓吾学長(68)=放射線医学=の話

 低線量被曝が原因で鼻血が出ることは、科学的にはありえない。大量被曝した場合は血小板が減少するため、血が止まりにくく、鼻血が出やすくなるが、血小板が減るのは(がんの死亡リスク上昇が確認されている100ミリシーベルトの10倍にあたる)1千ミリシーベルト以上の被曝をした場合であり、それ以下の被曝では影響がない
 住民も福島第1原発で働く作業員も、事故で1千ミリシーベルトを超える被曝をした人はいない。住民の被曝線量は大半が10ミリシーベルト以下。原発作業員の中に、白血球や血小板の数値に異常がある人がいるとは聞いていない。
 もし低線量被曝の影響で鼻血が出るのだとしたら、一般の人々より被曝線量の高い放射線技師や宇宙飛行士は鼻血が止まらないことになる。福島の人たちは過剰な不安を抱くことなく、安心して生活してほしい。
(以下略・引用終了)


 また南相馬市で医師をやってらっしゃる方は、以下のように反論しています。


http://apital.asahi.com/article/fukushima/2014051200007.html
 頭のCT検査(現在の南相馬市内で受ける外部被曝の数年分を、一瞬で浴びるレベルになります)やレントゲン検査で鼻血には誰もなりません。誰も、です。
 空気中の放射性物質が粘膜に付着することによって起こりうるとか色々おっしゃる方もいますが、いずれにせよ現状の福島県内のダストサンプリング含む被曝線量の検査結果から考えれば、噴飯物の話です。鼻血が医学的に放射線被曝との因果関係を疑う必要のある状況にはありません。
 南相馬市や相馬市でそんな患者さんが増えていることは、震災直後も含めて全くありません
(以下略・引用終了)


 まぁ繰り返しますが、『そんな短時間で放射能被害が発症するならば、定住している福島県民の多くはとっくに死んでいる』ので、最初から雁屋氏の妄想であったと断言していました。
 尚、あの後よく調べてみた所、放射線障害の一つとして鼻血は確かに出るそうです。過去の記事と矛盾していたのであれば、謝罪申し上げます。
 けれど『鼻血が出る場合、血液中の血漿が大幅に減少した』結果であって、『鼻血だけが出る訳ではない』の話です。
 他にも『血便や吐血、また傷が塞がらないなどの症状』が起きる筈なのに、何故か彼らは鼻血だけを取り上げている。

 同様に大阪の件についてですが、まぁこちらの地図をご覧下さい。


 福島第一原発と岩手県宮古市(大阪の処理施設が受け入れたがれきの所)との直線距離を量った図なんですが。

 ゼンリンによれば259265m、約260km程離れています
 いやまぁぶっちゃけますが、『これだけ距離を置いているのに放射線被害が出ていれば、福島県内はもっと悲惨な事になっている』と言いたい。と言うかそうなっていなければおかしい筈です。
 現地の住人は平気なのに、持ち込まれた側だけが健康被害?そんな馬鹿な話がある訳がありません。

 そして当然、大阪市・大阪府は明確に否定します。


漫画『美味しんぼ』での本府の災害廃棄物処理に関する記述について(2014-0512)
http://www.pref.osaka.lg.jp/shigenjunkan/haikibutukouikishori/comic.html
 平成26年5月12日に発売された小学館の週刊ビックコミックスピ リッツに掲載された「美味しんぼ」に本府の災害廃棄物処理に関連する記述がありましたが、下記のとおり、作中の記述にあるような状況は認められず、災害廃 棄物の処理は全て安全に終了していますので改めてお知らせします。

作中の記述について
 「大阪で、受け入れたガレキを処理する焼却場の近くに住む住民1000人ほどを対象に、お母さんたちが調査したところ、 放射線だけの影響と断定はできませんが、眼や呼吸器系の症状が出ています。」
「鼻血、眼、のどや皮膚などに、不快な症状を訴える人が約800人もあったのです。」
 これについては、大阪市が、処理を行った焼却工場の存在する此花区役所、同保健福祉センター、此花区医師会に確認をしましたが、処理中においても、その後においても、そのような状況は認められませんでした。

災害廃棄物受け入れの安全性について
 大阪府、大阪市が行った、災害廃棄物の広域処理は、岩手県からの要請を受け、岩手県宮古地区(宮古市、岩泉町、田野畑村)の災害廃棄物を受け入れました。
 受け入れに際しては、宮古地区において放射性物質の濃度を測定するなど安全を確認し、運搬、焼却など処理の各過程でも空間放射線量率などを測定し安全を確認しています。
 その結果各過程の空間放射線量率については全て受け入れの前後で値に変化はなく、安全に処理していることを確認しています。

 また、今回の記述については、大阪府及び大阪市は事前の取材は一切受けていません。
災害廃棄物の受け入れに関する測定結果などの詳細は下記をご参照ください。
 なお、大阪府及び大阪市は、平成26年5月12日、雑誌発行元の小学館に対して抗議を行いました。
(引用終了)


橋下大阪市長「美味しんぼはあくまでもフィクション。表現の自由ですからね。訴える気無いですよ。」
http://www.tokyo-sports.co.jp/entame/entertainment/265497/


 そもそも『本当にそれが放射線被害によるものであれば、医師の診断書(国内・国外どちらでも)を元に発表すべき』のが筋ではないでしょうか?それが一番手っ取り早いと思いますが、何故か彼らはそれをしません。
 それどころか『福島の真実!』と銘打って、科学的根拠のない妄想や、誰から聞いたかも変わらないデマを撒き散らす、狂人と大差ない行動を繰り返しています。

 科学的な反論(そもそも雁屋氏は個人的な感想の域を出るものではありませんでしたが)は以上、明日に続きます。


文責;弾犀@奇蹄類


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