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蛇 足 〜流言飛語とヘイトスピーチ11〜

 …… えっと完全な私見になりますが、どうしても書きたかったので。ネットウヨクやヘイトスピーチとは一切関係無――くもありませんが、蛇足だと思って頂けれ ば。


 小学生の頃に読んでいた漫画にB君というキャラクターが居ました。

 彼は元は上流階級の出身でお金持ちだったのですが、父親が事業で失敗し、母親も病死。また五人の弟妹を抱えているため、小学生の身ながら働いては生活費 へ充てていました。
 そんなB君ですが、必要以上に卑屈にもならずむしろプライドは高い。「落ちぶれても元上流階級」といってはあまり他人の手を借りずに生きていました。
 私が最も好きなエピソードでは”一杯のかけそば”というものです。作者の方は世相を皮肉ったり、風刺するのを取り入れており、確か同名の小説と一億円竹 藪事件(一億円を脱税したが置き場に困って竹藪に放置、第三者に拾われた)の頃のお話です。

 ある日、B君と弟妹はそば屋へ行きます。頼んだのは「かけそば一杯」。一杯だけ?と不思議がる店員さんにB君は頭を下げてこう言います。

「落ちぶれてすいません」

 店員はB君へ同情し、そばを大盛り、天かすや油揚げなどのトッピングを「余ったから」と偽って出します。B君や弟妹は大喜びしながらも、争う事無く一膳 の箸を使ってゆっくりと食べ終えました。

「あぁ、おいしいなぁ」

 帰り道にB君がそう思っていると竹藪(自宅?)の方にトランクが落ちています。何かと思って開けてみると現金がぎっしり入っていました。
 B君と弟妹は一躍時の人となりテレビや新聞で脚光を浴びます。拾ったお金を遣い込んだのか、其れともギャラが発生したのか覚えていませんが、兎に角お金 持ちになりました。


 後日、B君は再びそば屋へ行きました。店員が優しい顔で「かけそば、一杯ですね」と言うのに対し、B君は強欲そうな顔で首を横に振ります。

「一人5杯ね、トッピング全部載せで!」

 こうして弟妹は普通の人でも食べられないような贅沢なそば(伊勢エビ天載せ?)をお腹いっぱい食べました。其の帰り道、B君はお腹をさすりながら不思議 に思いました。
(……あれ、前の時の方が美味しかったな……?)


 数日経ってから現金の落とし主が現れます。持ち主へ返す際、B君はお礼は何が良いかと聞かれました。

「……かけそばが、食べたい」

 また弟妹は三度そば屋へやってきます。店員は(前回は無茶なオーダーだったので)引きつった笑顔を浮かべながら、「かけそば、全載せですね!」と訊ねま した。
 B君は静かにこう言います。

「かけそば、一杯なんですけど、構いませんか?」

 店員さんは顔を見合わせた後、心からの笑顔で、勿論、と応えます。
 弟妹で仲良く一杯のかけそば――という割には量が多すぎる――を囲みながら、B君が、

「やっぱり、かけそばは美味しいなぁ……」

と呟いて終わるエピソードだったと思います。流石に子供の頃に読んだきりの話なので細部は違うと思いますが、大体の話の流れは間違っていない筈です。


 漫画ではありますが、当時の私は非常に衝撃を受けました。貧乏であるにも関わらず、謙虚でしかも謙ったりはしないB君が大好きでした。またお金があれば 幸せとは限らないし、貧乏だからこそ大切だと分かってくる物がある、とも。
 成長するにつれ、漫画の作者さんが世相を取り扱った作品をメインにするようになり、少なからず嬉しく思った覚えがあります。
 其れから数年、いやもっと経ってからです。氏のインタビューを目にしました。


―― しかも、君たち年収200万円以下の下層でしょ?っていう。それでいいわけ?と。自分が選んでるんだよそれをって。
―― お前らもう30、40(代)になってるだろ、ほんとはよっていう。匿名でやってるけども若くはねんだぞっていう。
―― 結婚もできないっていうような身分に置かれてそれで満足してるわけ?って。全然何に対して怒ってるのか全くわからない。


 其所にあったのは”年収が 低い・若くない・未婚である”事(事実かどうかも怪しい)を理由に、相手の思想・言動(合法的な政治活動)を貶めている作者の方の姿でし た。
 子供時代 に氏から学んだ”境遇や生活環境に関係無く正しい事は正しく、また逆に貧しくなければ見えてこない視点だってある”とは正反対でした。


 氏――というか、小林よしのり先生。私は貴方の仰った事をずっと心に刻み、行動の規範として居ます。
 長じて特定政党や団体、民族への偏向報道、また日本人への偏見を減らすためにこうしてHPを立ち上げ、少なからず余暇を潰して駄文を綴って参りました。

 変わってしまったのは私でしょうか?貴方でしょうか?
 私が幼心に感動した、貴方の作品は嘘だったのでしょうか?
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