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安 全な所で自由を叫び、平和な所では靴を嘗める 〜偏向報道〜



「民 主主義を叫んで害の無い所で叫び、民主主義を許さない所では一所懸命に権力に媚びる」


 上の言葉は作家兼評論家の石平(せき・ひら、元中国国籍)氏がとあるノーベル文学賞作家へ向けた放った言葉です。
 其の方は作家としての活動実績は申し分なく(少なくとも“売れている=多くの方に受けて入れられている”という評価であれば)、日本の言論人として海外 へ出向いては積極的に発言をされています。
 私も嘗ては某氏を大変高く評価・尊敬しており、彼の寄稿が新聞へ載る度感心しながら拝読させて頂いておりました。
(尤も氏のお言葉はいつも難解であり、何割が理解出来ていたのか怪しい所ではありますが)

 今年、2012年はロンドンオリンピックです。日本人選手の活躍が期待される所ですが、貴方は前回の五輪がどこで行われたのか覚えておいででしょうか?
 そう、北京です。2008年には中国の北京でオリンピックが行われました。
 其の経過――世界各国を結ぶ聖火リレー中に、どんな事件が頻発したのか、とまで言えば既知の方が殆どでしょう。
 中国政府に弾圧されているチ ベット人、及び其の支援者の方達が世界へ生放送中のリレー中に抗議のため乱入が頻発した、というものです。

 方法や目的の是非については 触れません(後日詳しく触れます)が、オリンピックの史上稀に見る恥曝しであったのは確かでしょう。現在進行形で独裁国家での自由の祭典(を 自称する)である五輪を開催し、中国のみならず、実施委員会・スポンサー共に問題があると世界へ知らしめた訳ですから。
 また中国政府は各国に居る留 学生や華僑を動員し、反対する運動家からリレーを守らせました。国を超えて多くの中国人が聖火リレー沿道を取り囲み(活動家や現地の人間を脇へ追いや り)、一心不乱に五星紅旗(中国の国旗)を振る様は恐怖以外感じませんでした。
(そして中国政府のやり方を非 難する中国人が皆無、という如何に同民族が抱える闇が深いかを確信しました)

 日本には60年以上前の日本の戦争犯罪を今尚追求し続ける団体があります。 其れについて是非は語りません。
 また幾つかの全国紙は折に触れ、“太平洋戦争”や“日本の戦争責任”を特集します。其れについての善し悪しもまた触れません。
 反日・親日かどうか以前の問題で、日本は言論の自由があるのですから、他者が○○という事柄について意思を表明するのは、憲法で不可侵とされている権利 なのですから。
(虚偽や侮辱に当たるものは除きますが)

 其れで? 日本のテレビ・新聞等公的な場で、ジャーナリストやコメンテーターが現在進行形で続く独裁国家の、チベットやウイグルへ対する侵攻については、どれだけ報 道しましたか?
 半世紀以 上前の自国の戦争責任について未だ触れるのですから、隣国が今現在している国家主導の弾圧・民族浄化について舌鋒鋭く追求した筈ですよね?
 まさか直ぐ後に 迫っている北京五輪で報道規制されるのを恐れ、事実をさらっと流して済ませている、なんて事は無いでしょうから。

 日本のマスコミや自称ジャー ナリストの方々の“報道姿勢”や“真実の追求”とやらは此の程度です。もし迂闊な発言をしてしまえば入国を拒否され、映像が撮れなくなりま す。放送する筈だった番組は流れずに、スポンサーへは違約金を支払らなければいけません。
 つまり“自国の半世紀前の犯 罪(か、どうかも分からない代物)を厳しく追及するジャーナリストが、他国の民族浄化は扱わない”のが日本のジャーナリズムだと。
 同様の事実をゴールデンで報道したら如何でしょうか?ひな壇に芸人を載せて大して知りたくもない私生活を暴露するバラエティよりも、視聴者の方々は嗤っ て頂けるかと存じます。

 実は北京五輪だけの話ではありません。“日中記者交換協定(日中報道協定)”というものが存在します。いや、実在するかどうかは分かって居ません。
 というのも同協定の内容は“中国に都合の悪い報道をすれば、国内から追放(最悪逮捕)される”という内容です。協定のあるなしに関わらず、独裁国家であ れば実際にそうなるでしょう。

 実際に思い当たる点は多いかと存じます。
 2009年のチベット動乱の際、日本各社は“暴動”と称しました。しかし其れはあくまでも中国政府の側の視点です。現地へ入らず、中後政府の広報をその まま垂れ流し、良くて映像は外電(海外のジャーナリストの取材)を流していました。

 さて、こうなってくると自由に発信するジャーナリストは(日本の)どこにも存在しない、という結論へ落ち着いてしまいます。
 ですが私は否、と応えたいかと存じます。今、貴方が目にしている世界、つまりインターネットでは違うからです。
 というのもテレビ・新聞局が(中に居る方の本音はどうあれ)スポンサーの意向が極めて強く反映されます(※アメリカでトヨタバッシングが起きた際の報道 は、また別であり此も後日取り上げます)。

 しかしネットは違います。私のような素人(中には匿名の記者、また逆にプロの活動家の方も居るんでしょう)には柵がありません。
 スポンサーが居ないからこそ自由に発信が出来、また政府や報道各社が受ける(で、あろう)圧力に屈さない、のもまた事実です。
 私のような新参を含めた、不特定多数の人間が様々な思想・信条を元に各種右から左、全体主義から無政府主義まで、多種多様な言論活動をしているのが現状 です。

 例えば日中記者協定のような圧力を加えようとしても、やっているのは不特定多数の“個人”です。主催する団体や先導する人物が居ないため、取り締まり出 来ません。
(が、“人権擁護法案”という民主主義国にはあるまじき悪法が審議されようとしているのもまた事実です。詳しくは同名で検索するか、後日取り上げます)


 前書きのような本題のような話が長くなりましたが、嘗て私が尊敬していたノーベル賞作家の日本人の方は、北京五輪聖火リレー、チベット争乱事件、翌年の ウイグル独立運動に際して、一切、何一つとして、政治的な発言を避け続けました。
 どころか中国国営の出版社(と言うか中国企業は例外なく、株式の半分を国が占めなければいけません)からの招待を受けました。


2009年1月8日 朝日新聞
 【北京=峯村健司】7日の中国紙、中国青年 報(インターネット版)によると、中国の大手出版社、人民文学出版社などが選出する「21世紀年度最優秀外国小説」の今年の受賞作に、大江健三郎氏の小説 「臈(らふ)たしアナベル・リイ総毛立ちつ身まかりつ」が選ばれた。日本の作家が受賞するのは初めて。
 今月中旬に正式発表される予定で、北京で開 かれる授賞式には大江氏が出席する予定。この賞は今回で7回目、中国出版界で最も権威のある文学賞の一つ。
(以上引用終了)


 知りうる限り日本の報道局では大江氏が何を言ったのかを伝えた所はありません。推測の域を出ませんが、“五輪中に中国の 人権問題に口を出さなかったご褒美”だと思うのは、私だけでしょうか?
 まぁ常識的に考えて中国国内 で都合の悪い言動をすれば、直ぐさま逮捕・拘禁されるでしょうから、きっと当たり障りのない謝辞を捧げて帰国されたのだと思います。

 では最後に大江健三郎氏の著作の中で引用されており、また私がこのようなブログを立ち上げた動機の一つとなった言葉を捧げたいと思います。

「(戦争に)抗議しない人間は共謀者である」 ――クリストフ・ニーロップ

 つまり大江健三郎さん、貴方 が過去中国に抗議しなかった事、そして現在抗議しないでいる事――貴方の、中国という国家へ対して何も声を上げないのは、現代もチベット・ウイグルで民族 浄化をし、空母を建造して東アジアの制海権を乱し、日本人を拉致し、核開発と長距離ミサイルを続ける国と軍事同盟を結び、一党独裁体制が60年以上続き、 13億の人口に対して指導部の選挙資格が8000万人程の共産党党員しか 持っていないような独裁国家と貴方ご自身が共犯者である、という認識で宜しいで しょうか?

 ……んー、可能な限りシンプルに問おうと思っていたのですが、何故か冗長になってしまいましたね。では改めて。

「大 江健三郎さん、中国は日本のような平和的な原子炉だけじゃなく、核開発・核ミサイルの運用もしているんですが、どうして何も言わないんですか?」
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