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世 界を覆う病  〜衆愚政治3〜


 2008年、アメリカでバラク・オバマ大統領が当選しました。彼は政策として「国民皆保険」「雇用の創出」等、中間〜低所得層向けの社会保障を掲げまし た。
 アメリカには国民保険がありません。国民は任意、または家族や会社単位で保険会社と契約しなければならず、また契約内容によって受けられる医療も限られ てしまいます。
 よってオバマ大統領は“日本のような国民皆保険制度”を目指しました。其れ自体は喜ばしい事ですね。

 ですがよく考えてみて下さい。国家が社会保障を増やせ ば規模に応じて予算が増大します。つまり今まで国民が負担していて居た額、加えて(所得が足りず)負担出来なかった額、両方が政府へとのしかかります。
(其の分だけ増税されます)
 またアメリカは移民をある程度許容する国ですが、彼らに対しても国民保険は適応されます。そして移民の多くは本国で生活出来ていれば、移民しなくとも良 かった層――つまり低所得者が殆どです。
 であればアメリカ国民はやはり彼ら移民の分まで負担しなくてはならない、とそう考えました。

 ティパーティ(茶会)派と呼ばれる緩やかな思想を持つグループや、共和党を主とした保守系政治家から賛成を得られず、国民皆保険は頓挫したままになって います。
 ちなみに日本のマスコミは一切触れませんが、ティパーティ派はボストン茶会事件の其れを捩っています。茶会事件とはアメリカ独立運動の先端を開いた事件 の一つです
(つまりティパーティ派そのものがアメリカの“民主党からの独立”を意味しているのですが、其れすら汲み取れないのか、そもそも茶会事件をご存じでないの でしょう)


 隣国の韓国では李明博大統領を嫌う政党が躍進しています。現大統領は対北強固路線(と、言われていますが、実際自国へ砲撃を加えてきた国へ強硬となるの は、当然であるとも思えますが)を採っています。
 其れに反対するのは親北思想を持つ、前盧武鉉大統領に近しい政党です。
 4月の総選挙では与党が辛うじて過半数を取ったのですが、直後に数人が離党したため、現時点では過半数を満たしていません。

 一応断っておきますが、李大統領の実務能力は歴代大統領の中で、最も優れていると言って良い程高いものでした。特に対外工作、韓流コンテンツへ国家予算 を費やして推し進める一方、存在しない“強制”慰安婦を世界へ知らしめようとする、日本の国益を大きく毀損する政策は、国内でもっと評価されるべきでしょ う。
(※韓国の国益が日本の国益とはなり得ない実例です)
 しかしそんな彼と与党が評価を落としているのは、ギリシャショック以降の同国の経済状態悪化です。
 韓国はGDPの多く、約8割を輸出入に依存しています(日本は二割を切ります)。よって外需、海外が好景気であれば比例して景気は良くなり、海外からの 需要が減れば景気も悪くなる傾向が強いです。
(経済規模が低いため、海外の需要に引きずられます)
 よって野党は韓国が不景気になった原因を、現政権の失政だと攻撃しています。
 韓国のメディアもまたそうなのですが、大抵はそういった世論へ迎合するかのように、政府批判という安易な手段を採っています。


 EUへ目を向ければフランスのサルコジ大統領(右派・国民運動連合)がオランド(左派・社会党)氏と争い、敗北しました。
 オランド新大統領は公約として、

若者を中心とした15万人の公用の創出
退職年齢の引き下げ(62歳から60歳へ)
富裕層や企業への増税

等を掲げました。おや、”増税しながら景気を良くする”と は、どこかで聞いたような話ですね。
 フランスがドイツと共同で行っている、EU圏にあるギリシャのような財政が脆弱な国家、企業への融資も止まる――の、ではないかとの話が流れ、一時株 安・債権安になりました。
(新大統領就任以外の要素がないのに、ユーロが大量に売られました)

 またサルコジ前大統領へ反発も強かったようです。曰く、どうして他国の面倒(債務の肩代わりや融資)をしなければいけないのか、と。
 現地メディアもそう言ったネガティブな面を押し出し、結果ユーロ再生に取り組んできたサルコジ氏が失職しました。
 だからといってサルコジ氏が続けてきたユーロ圏内への融資政策が無駄だったかといえば、そうではありません。正確には其れ以外に手段が無かったとも言い ますが。

 日本のバブルが弾けた直後、当時の政府が複数の企業や 金融機関へ公的資金の投入を決定しました。
 日本のマスコミや経済人、自称コメンテーターの方は激しく、其の決定を非難しました。不公平だ、差別だ、護送船団方式だ、等々。

 しかし其の結 果、企業の多くは倒産せずに済み、多くの日本人の雇用は護られ、貸し付けた公的資金は返済されました。其れが事実の全てです。
 其れから約30年 が経ち、アメリカでサブプライムローンが弾け、EUで信用不安が沸き上がり、公的資金による民間や国家の救済を採るに至ります。
  其の構図が嘗ての日本の焼き直しにも関わらず、本のマスコミは何一つ異論を挟まず、それどころか賞賛し続けているのが現状です。


 新聞やテレビでは良く海外の言論人の談話を引用します。少し前までポール・グールグマン氏(ノーベル経済学賞受賞)が日本の失われた二十年について言及 しているのを、良く掲載していました。
 ただし掲載しているのもまた、“日本のマスコミによって選別された”ものである事も確かなのです。


“西欧の経済学者は日本、東京に行って天皇に 謝らなければなりません”
http://media.daum.net/economic/world/view.html?cateid=100021&newsid=20120528110314832&p=mk&t__nil_economy=downtxt&nil_id=5
 去る2008年ノーベル経済学賞受賞者であ り、米国ニューヨークタイムズ(NYT)のコラムニストで活躍しているポール・クルーグマン(59)米プリンストン大教授が西欧経済学者に反省を促した。
 クルーグマン教授は去る26日英国ファイナ ンシャルタイムズ(FT)の週末版でFTの首席コラムニスト マーティン・ウルフと現在のユーロゾーン危機の解決法に関してインタビューを受けた。
 ここでウルフが“経済危 機以後の対応は日本が(現在の西欧圏より)上手だった”とムードを高めるとすぐにクルーグマン教授も “日本は西欧ほど深い景気低迷を体験しなかったし、いわゆる‘失われた10年’間にも1人当り所得を概ね向上させてきた”と同意した。
 彼は“一時西欧経済学者が反面教師として取り扱った日本経済を、今はロー ル モデル(role model)と見なさなければならない”、“私は過去日本経済を悲観した西欧経済学者たちに、東京に行って天皇に謝 るべきだと冗談を言ったりする”と付け加えた。
(以上引用終了)


 と、いった具合に“日本の元与党(政府が行った政策)を誉める記事は一切掲載しない”という社内規定があるかのようです。


 さて“現実を騙らずに理想を騙る”事の危険性、及び其 れを煽る事の無責任さはご理解頂けたかと存じます。正しい政策を実行していたとしても、其れが必ずしも国民へは理解さ れるとは限りません。
 衆愚政治とはそういった“国民が人を見る目がない”事を指していたのでしょうが、現代では徐々に意味合いが変わってきていると思います。

 私達は現実に生きています。ほほ全ての方が労働して対価を得るか、また学んで人生の糧としているか、またはある種のモラトリアムを得ているでしょう。
 そして私達は選挙だけでなく、人生の教訓や指針を得るために情報を求めます――と、大げさに言いましたが、実際にはAという店よりBの方が安い、という 其の程度の情報も含まれます。
 出来れば政治家にせよ、政策にせよ、またお店の情報も私達が調べた上で、判断し、結論を出すのが最善です。
 しかし先に挙げたように、一人一人がそういった情報を 求め、分析するのは困難です。
(専門知識、また取材する時間の有無などによって)

 そこで私達は“マスコミュニケーション”という媒体へ 対価を何らかの形(新聞代だったり、広告を見る事)で支払い、判断するための情報を得ています。
 ですが――私達へもたらされているものが歪で、一方的 で、現実に即したものではない、酷く発信側の意図が入っています。

 其れが世界を覆う病、其れは衆愚政治だと私は推測しています。
 しかし其の病がどこから来たのかと言えば――営利至上主義にしてこの上なく無責任、現実を語らず理想を騙りながらも、本当に危険な国や団体には触れな い、彼らマスコミがもたらしています。


 黒死病、所謂ペストが大流行した際、ヨーロッパの三分の一の人間が死にました。ウイルスを媒介したのは齧歯類のネズミと其れにつくノミが原因です。
 彼らに悪意があった訳ではありません。彼らにとってすれば彼らの利益、つまり普通に生活を営んだ結果として、人間社会へ病気が蔓延してしまいました。

 マスコミもまたそうなのでしょう。生活保護不正受給事件 にせよ、彼らにとっては生活の一形態に過ぎないかも知れません。特定政党への異様な擁護報道(恐らく減税やスポンサーとの絡みがあるのでしょうが)、それ すらもマスコミ村を護るには普通の出来事なのでしょう。
 其処に国民を騙すとか、誰かを害しようとする悪意はないのかも知れません。

 しかし彼らを放置する事によりもたらされる害悪、衆愚政治という病気――例としてはユーロ圏の破綻と其れに伴う世界恐慌、日本であれば政権交代による様 々な弊害――を無視して良いものではありません。

 ……日本のマスコミは黒死病を媒介するネズミとノミ、どちらでしょうね?ネズミが単独で種を営んでいるに対し、ノミは何かに寄生しない生きていけない ――という事はノミで決まりでしょうか。
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