header
 トップへ | 此のサイトについ | ご意見・ご要望のメール

円高で失った日本の国益 〜マスコミは“誰”の国益を尊ぶ?〜

 今日は経済の話をしましょうか。あまり得意ではありませんが、一般常識の範囲でお話しさせて頂きたいと思います。

 まず貴方の前にピザがあります。照り焼きチキンでもエビマヨでも構いません。切り分けるのは……まぁ八等分でしょうか。最大八人まで相伴に預かられると言う事です。
 しかし貴方や友人、更に家族全てを合わせると10人居ます。内、二人はピザにありつけない計算となります。
 まぁ実際には他に追加注文するなり、冷凍食品を出せば問題無く終わるでしょう。


 では経済の話です。ピザを“雇用”だと考えて下さい。
 Aと言う企業では8人しか雇用しません。従って10人志望者が居れば、自動的に2人は失業者となります。
 当然二人分の雇用が無いため、其の国では二人分景気が落ち込む――本来ならば、彼が生み出すべきだった経済活動(車を買ったり食事をしたり、通常に職があれば普通に消費される分ですね)が失われ、二人分の景気が縮小してしまった、と見なされます。


 何を当たり前の話をしているんだ、とお思いでしょうが、もう少しだけ続きます。我慢してお付き合い下さいませ。


 ではとある地域にAと言う国家があります。Aの通貨は高い状態にありました。
 同時に近くにはBと言う国があり、B国の通貨はA国と比べて安く、人件費を抑えられます。
 そうすると企業は通貨高のA国を嫌って、B国へ工場や拠点を移す動きが出て来ます。其れが“為替高に於ける海外移転”です。
 そして“本来であればA国に生まれる筈だった雇用が、海外移転したため、B国に奪われてしまった”と、経済的には受け取ります。

 通貨の上げ下げは仕方がないので、貿易黒字を続ける日本等は上がって当然――だった、んですね。
 今では高騰する火力発電所用の燃料費へ、莫大な国富を流しているため、貿易赤字引いては円安――に、なる筈でした。

 しかし実際には野田元総理が解散するまでは1ドル70円後半という、未曾有の円高水準にありました。此は一体どう言う事でしょうか?
 アメリカのピーターソン国際経済研究所が、2012年末に発表した資料をご覧下さい。
(外電さん、いつも有り難う御座います)


Currency Manipulation, the US Economy, and the Global Economic Order
C . Fred Bergsten and Joseph E. Gagnon
通貨操作国の米国経済とグローバル経済に対する悪影響
PIIE(ピーターソン国際経済研究所)C . Fred Bergsten and Joseph E. Gagnon
http://www.piie.com/publications/pb/pb12-25.pdf
 一覧表1に示すように20ヶ国以上が自国の通貨を安く保つ為外為に市場に介入しドルを購入して、その程度は平均して年間1兆ドルである。
  この介入は何年も続いていて、それらの国の通過を過小評価させ輸出競争力を高めてきている。中国は、これらの通過操作国の中でも最大規模の介入を行い、経 済的にも最大の影響を与えている。此れに加えて幾つかのアジアの国と石油生産国、それにユーロ圏近隣の幾つかの国が大幅な介入を行なっている。
 また何ダースもの国が、小規模ながら国際競争力の防衛のために外為市場に介入している。
  この論文で示すように2011年に見られた通過操作の介入は、1兆ドルの規模に達していて正当化出来る範囲を超えていると筆者らは判断する。この介入によ る通過の過小評価を計算し、その結果生じる貿易収支の増加を試算するとこれら通貨介入国の年間利益は4千億ドルから8千億ドルである。欧州の多くの国や幾 つかの途上国は、これらの通過操作国に苦しめられている。
 しかし最大の被害者は米国で貿易収支と国際収支の赤字は年間2千億ドルから5千億ドルに達する。此れは米国の100万人から200万人の失業につながる。完全雇用状態と現在の失業状況の差の、約半分が外国の通貨操作に関連する。
 米国の失業率低下のために貿易収支改善が必要であり、財政再建は必須である。
 金融緩和はこれらの状況で必要であるものの金利は既にゼロに近い。金融の量的緩和は既に実施されてきており、こうした中で通商政策が残された有効な手段である。
(以下略)


 文中にもあったように“20ヶ国以上が自国の通貨を安く保つ為外為に市場に介入しドルを購入して、その程度は平均して年間1兆ドル”の介入を続け、“完全雇用状態と現在の失業状況の差の、約半分が外国の通貨操作に関連”と結論づけています。
 要は『不正に自国通貨を安くして、アメリカが本来得るべきであった雇用を、外国が奪っている』と言う話ですね。

 ピーターソン機関の発表の数日後、麻生財務大臣は以下のように話しました。


麻生財務相「欧米は3年前の合意を守らず、自国通貨安を放置した。(円安を)諸外国に言われる筋合いはない」(2012-1229)
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324484504578208403917726338.html
 麻生太郎財務相が、円高に対する言葉による攻撃をさらにエスカレートさせている。ここ数年米国や欧州が自国通貨の大幅安を放置したことに苦言を呈し、また、米国に対してはドルを上昇させることを要望する発言をしている。
(中略)
 しかし、麻生氏の発言もここ数年の円高による日本産業の世界との競争力減退に対する国内に渦巻く深い苛立ちを示すものだ。
 28日に行った財務相就任後の最初の報道各社向けインタビューでは、米国はドルを強くするという本来の仕事をするべきだし、その点はユーロもどうなのか、と語った。
 さらに麻生氏は、各国が通貨の引き下げ競争は行わないと誓った3年前の20カ国・地域(G20)の会合以来、円はドルとユーロに対し大幅に高くなったと述べた。
 その上で、G20メンバーのいくつの国がこの約束を履行していだろうかと疑問を投げかけ、日本は約束に則って適切な行動をとってきたと強調、「諸外国に言われる筋合いはない」、と述べた。
(以下略引用終了)


 そして其れを受けて円は80円台後半へと移行して行きました。同時に日本の株も一万円台を回復し、経済対策を打っていないにも関わらず、僅かに景気が上向いたのです。
 まぁ其れも私のように“円安になれば日本の対外競争力が増し、また海外移転していた工場が戻ってくるのではないか?(=国内での雇用市場が活性化するだろう)”と見込んだ方が多かったのでしょう。
 株価に一喜一憂する人間は少ないかもしれませんが、雇用は日本国民全員にとって、極めて大切な問題です。ですから多くの人間は喜ぶべき事――なん、ですか、“やはり日本のマスコミは一線を画して”いました。


社説:安倍政権と経済 「世界の中の日本」自覚を
(毎日新聞 2012年12月28日 02時33分
http://mainichi.jp/opinion/news/20121228k0000m070132000c.html
 日本経済は米国、中国に次ぐ3番目の規模を持つ。
 「転落した」と悲観する向きも国内にはあるが、世界は「3位の経済大国」として注目している。さまざまな影響が国外にも及ぶからだ。
(中略)
 あからさまな円安誘導も、経済大国として誇れる政策ではない
 為替相場は、経済の実態から極端にかけ離れた行き過ぎや乱高下といった場合を除き、市場に委ねるのが国際社会の了解事項だ。
 首脳や経済閣僚が具体的な相場水準に言及して誘導するようなことはしないものである。
 安倍首相には、円高・ドル安につながる米国の大規模な金融緩和に対抗すべきだとの考えがあるようだ。
 しかし、効果の限界や弊害が指摘されている他国の政策は本来、追随して対抗するのではなく、第三国と協調して修正を促すべきだろう。
 すでに一部の国から懸念の声が出ているが、通貨安競争に拍車をかけ、途上国や新興国に混乱が及ぶようなことは、責任ある先進国のとるべき行為ではない。
中国に人民元の自由化など求めていく上でも不都合だ。
(以下略)


 つまり毎日新聞は“一部の国から懸念が上がっている”から、日本の円高を放置し、日本から次々海外移転し、日本人の失業者が街に溢れるのを黙って見ていろ――こう仰るわけでしょうか?
 “日本が円高になると困る国”にも興味がありますね。場合によっては遠慮する必要もあるかも知れません。毎日新聞が仰るのですから、相当大事な国であるののは間違いなのですが。

 そして其の“一部の国”の話題です。


韓国 輸出額3年ぶり減少に転じる
(NHK 1月1日 16時44分)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130101/k10014548551000.html
 韓国の去年1年間の輸出額は、中国の景気減速やヨーロッパの信用不安などの影響で、3年ぶりに前の年より減少し、来月大統領に就任するパク・クネ氏にとっては、輸出の回復を図ることが、経済運営において一つの課題になりそうです。
 韓国の知識経済省が1日に発表した貿易統計の速報値によりますと、去年1年間の輸出額はおよそ5482億ドルで、前の年に比べて1.3%減少しました。
 韓国の輸出額は、3年前は28%、おととしは19%、それぞれ前の年を大きく上回っており、3年ぶりに減少に転じたことになります。
(中略)
 ただ、このところ通貨ウォンが値上がり傾向にあり、韓国経済を支えてきた輸出企業にとっては逆風で、来月大統領に就任するパク・クネ氏にとっては、輸出の回復を図ることが、格差の是正などとともに、経済運営において一つの課題になりそうです。
(引用終了)


 記事中では“3年ぶりに減少”と言う言葉が使われています。3年、3年ですが……そう言えば、つい最近日本でも“3年ぶり”と言う言葉を耳にしたような気がしますね。
 まぁぶっちゃけてしまうと、約三年三ヶ月前、2009年第三四半期(9月末)の円の終値は1ドル93円です。今では――と言うか民主党政権下では1ドル76円前後まで高騰しました。

 此は――偶然でしょうか?韓国に優しい民主党政権時代では、日本円が異様な高騰を見せていたのに、一切是正される動きはなく、其の間韓国経済は著しい躍進を遂げました。
(小口の為替介入はしたものの、介入防衛ラインを現役大臣が暴露する、と言うおまけ付き)
 まぁ実際には財閥以外はボロボロですし、財閥自身も外資の英領力が高いのですが、まぁ其れは置いておくとしましょう。
 兎に角、様々な工業製品で日本と競合する韓国は、円高ウォン安のため、国際競争力を苦もなく手に入れられたのです。

 しかも其れだけではありません。韓国はアメリカから直接”為替操作国”と非難されています。


- 韓国政府の為替市場介入 米国が自粛要請 -2012-05-26 11:59:32
http://world.kbs.co.kr/japanese/news/news_Ec_detail.htm?No=43833
 アメリカ政府が、韓国政府に対して外国為替市場への介入を自粛するよう要請してきました。
 アメリカ財務省は、このほど連邦議会に提出した主な貿易相手国の「経済・為替政策についての半期報告書」で、韓国政府が随時、外国為替市場に介入していることを指摘し、為替レートの弾力性を拡大するよう圧迫し続けていく方針を明らかにしました。
 報告書は、韓国は公式的には市場為替制度を採っているが、ウォンの変動を少なくするために当局が随時、市場に介入しており、去年9月にも韓国政府が為替相場を不当に操作したと指摘しています。
 一方で、アメリカ財務省は、中国については、人民元の切り上げ努力が足りないとしながらも為替操作国とは認定しませんでした。
(引用終了)


 韓国は自国の輸出企業を国際競争で優位に導くため、意図的にウォン通貨を安くしていたんですね。つまり国家ぐるみで卑怯なダンピング行為を恒常的にしている、と。
 そして自動車や家電、半導体まで韓国は日本企業と競合する分野を多く持ちます。従って”韓国が不正な為替操作をし、儲かれば儲かる程、日本国内では失業者が増える”と言う構図になっています。
 結局の所、世界市場は広いと言っても、全体量は限られています。よってピザ(消費者)は全ての国家で取り合っています。其れを韓国は国家全体が為替を引き下げ、荒らし回っている、と言うのが現実です。
(尤も、為替操作をすればする程、ドル買いウォン売りをすればする程、為替市場にウォンが溢れるため、韓国国内ではインフレで国民が苦しんでいます)

 日本国内の景気は下向きとなり、本来であれば(円高で無ければ)国内に建てられ、日本人が雇用される筈だったのに、企業は海外移転を続けました。
 しかし政権交代が起こり、適度に適切な対応をする(少なくとも未曾有の円高にはなっていなかった)自民党が与党になった瞬間、為替レートは一割以上も値下がりしました。
 何もしていないとはいえ、喜ぶべき所なのに毎日新聞を筆答する日本のマスコミは、日本の円安を嫌う社説や記事の論調を張っています

 少なくとも今、彼らマスコミが円安を悪というのであれば、政権交代以前1ドル95円前後に「円高を是正しろ!」当時の与党自民党に激しく詰め寄っていたのは、欺瞞以外の何者でもない、と言う話です。


 円高・円安、どちらに振れてもメリットとデメリットはあるでしょう。しかしピーターソン機関が提言しているように“度の過ぎた通貨高は国内の雇用を奪、国際競争力を落とす”のも事実です。
 昨年末に政権交代が成って、新しい政権は「現在のような円高は良くない」判断しました。そして円安圧力が高まるのを受け、僅か一ヶ月も経たずに一割以上円安となりました。

 其れで?貴方の国の貴方のマスコミは一体何と報じましたか?まさかとは思いますが、「自国よりも隣国の国益を優先させるため、通貨高にして国際競争力を低くしろ!」とか、妄言を吐いてはいないでしょうか?

 何と言いましょうか、此が日本のマスコミの本質ですね。日本の利益よりも海外の、しかも韓国・中国・北朝鮮と言った反日国家の国益にお伺いを立てている、と。
 貴方は、毎日新聞のように「自国の国益を捨て、韓国に配慮せよ」というマスコミを信用出来ますか?

inserted by FC2 system